「まさトラ」と「ほぼトラ」=8年前はなかった選挙中の「トランプ・トレード」

8年前の、「トランプ・ラリー」の特徴

トランプ氏が、最初に米大統領選挙で勝利したのは8年前、2016年11月のことだった。投開票が進む中で、トランプ氏の優勢が伝わると、当初米ドル/円は105円程度から101円台へ急落に向かった。

ただその後反転すると、その日のうちに105円まで戻り、さらに週末までには一時107円近くまで、安値の101円台からの反発率は最大で6%近くに達した。結局、この週の米ドル/円は長い「下ヒゲ」を残した比較的大幅な陽線となったが、結果的に見るとその後約1ヶ月で118円までの一段高となり、「トランプ・ラリー」と呼ばれた動きの始まりだった(図表1参照)。

【図表1】米ドル/円の週足チャート(2016年10月~2017年5月)
出所:マネックストレーダーFX

これに対して、今回の大統領選挙でトランプ氏が勝利した1週目の米ドル/円の上昇は、安値からの最大上昇率が2.3%と、8年前の「トランプ・ラリー」と比べると半分程度にとどまった。この結果、週足チャートも、むしろ「上ヒゲ」が目立つというもので、8年前とはかなり違った形となった(図表2参照)。では、8年前と今回の違いについて少し考えてみよう。

【図表2】米ドル/円の週足チャート(2024年2月~)
出所:マネックストレーダーFX

8年前と今回のトランプ氏勝利の違い

8年前の米大統領選挙では、投開票が始まるまで、トランプ氏は劣勢との見方が一般的だった。しかし、開票が進む中でトランプ氏優勢との見方が広がると、「まさかのトランプ氏勝利」という意味で、「まさトラ」との言葉が使われた。

こうした中では、トランプ氏の選挙公約、大型減税や関税の引き上げという基本的に株高、金利上昇をもたらす要因を選挙前に先取りする動きは限られただろう。「まさトラ」となり、開票が進む中でトランプ氏勝利の可能性が高まると、株高、金利上昇要因を本格的に織り込む動きとなったことから、株高、金利上昇、米ドル高の「トランプ・ラリー」も一気に勢いづいたのではないか。

このような状況は、今回の場合とはかなり違っていただろう。今回は、投開票のかなり前から「ほぼトランプ氏の勝利で確定」という意味の「ほぼトラ」という言葉が使われていた。よって、トランプ氏の選挙公約の大型減税や関税の引き上げに沿った株高、金利上昇、米ドル高を見込んだ「トランプ・トレード」拡大を指摘する声が多かった。8年前に「トランプ・トレード」という言葉はほとんどなかったことを考えると、8年前と今回の違いとしては興味深いのではないか。

選挙結果が出てから「トランプ・トレード」が本格化した8年前に対して、結果が出る前から「トランプ・トレード」が広がっていた今回では、株高、金利上昇、米ドル高という「トランプ・ラリー」に違いが出るのも当然だろう。8年前に比べると、今回の「トランプ・ラリー」は限られ、場合によってはその反動を試すことになる可能性もあるのではないか。