2024年9月から上昇していた米ドル/円

・米ドル/円の日足チャートを見るとトランプ勝利後、大陽線を出して154円近くまで上昇した。このご祝儀相場で終わりかと思ったが、先週また157円近くまで米ドル高・円安が進む。しかし先週金曜日あたりから米ドルは反落。156円台で今回の米ドル高・円安は終了か。

・8年前のトランプラリーでは、101円から118円まで1ヶ月で17円も上昇したため、今回もそれと比較してさらに上がるだろうと考える人も多いかもしれない。しかし、9月半ばは米ドル/円は139円だった。それが156円まで上がったので、17円の値幅がある。前回、1ヶ月で一気に上がったのに対し、今回は2ヶ月かけてゆっくり上昇したと考えれば、もう終わってもおかしくないと考える。

年末に利益確定する個人投資家

・そもそも11月、12月はここ数年米ドルが下がりやすい。米ドル/円の月足チャートを見ると、2023年は2ヶ月連続で151円から140円まで急落し陰線になっている。2022年は11月~2023年1月まで3ヶ月連続で陰線になっていて、151円から年明けには127円まで下がっていた。

・米ドル/円とCFTC統計の投機筋の円ポジションを見ると、2023年151円から140円まで急落していた時期に、米ドル買い円売りポジションが急縮小しているのがわかる。また、2022年の151円から年末年始に130円を割れるまで下がった時期も米ドル買い円売りポジションが急縮小している。

・円高になっていたため円売りポジションを減らしたというのもあるが、米ドル買い円売りポジションを減らして調整する、それが米ドル安・円高をもたらし、その円高がさらなる円の買戻しをもたらすというように、原因はポジション調整の方に比重があったのではないか。特に日本の個人投資家の場合、確定申告などを考えて、年末に向けて利益確定をする傾向にある。そうすると円高が進んでいくので、利益確定というよりも損切りのため、あわててポジションを確定し、それが米ドル安・円高をもたらしていたのではないか。

・2024年は夏に一度米ドル・円が暴落したため、過去2年と比べても米ドル買い円売りポジションは大きくはない。とはいえ米ドルが高いうちに売りたい。それが先週の金曜日(11月15日)頃から進んでいる。先週の金曜日は米ドルを売る理由はなかった。強い経済指標が出ても上がらないため、下がる前に売っておかないといけないという心理が働いたのではないか。

年内の円安見通しがカギ

・カギは年内の円安見通し。年内、160円まで円安が続く見通しなら、ポジション調整を急ぐ必要はない。8年前のトランプラリーのときは金利差が急拡大したのに合わせて米ドル/円も急騰し、それは12月上旬にかけて続いた。今はまだ11月中旬なので、米ドル高が続くと考える人がいてもおかしくはない。しかし、160円まではいかない、12月中旬までは続かないとなると、あせりが出てくる。その見極めが重要。

・冒頭に述べたように前回のトランプラリーと今回はそもそも違う。8年前は開票が進んでからトランプトレードが始まった。今回は2ヶ月前からトランプトレードを仕込んでいた。値幅的にももう17円米ドルは上がっている。その意味でももうほぼ終わったのでは。この見方が一般化すると、ポジション調整に与える影響は大きくなるだろう。

トランプ政権下で金利はどうなるのか

・前回トランプ勝利時の米10年債利回りの推移を見ると、1.7%から2.6%と1%近く急増している。今回は投開票が始まる前が4.2%程度で現在4.5%程度まで上昇。これは前回トランプラリーと比べると小幅のように思えるが、9月の半ばは3.6%まで長期金利は下がっていた。それが4.5%まで上がったことを考えると、値幅で見ると1%弱ある。期間の差はあれ、同じようなプライスインパクトがある。

・トランプラリー後、金利は下がる。トランプの政策の中で金利上昇要因と言われるのが大型減税である。これは来年度予算で議会が審議する。米国は10月から次年度が始まる。議会審議が始まる2017年9月まで金利は低下。これはトランプラリーで上がり過ぎた分の調整が入ったのだろう。

・今回の場合も、ポジション調整があり、金利は低下する可能性もある。米ドル・円とともに金利も修正局面がこれからあり得る。2024年11月中に150円割る可能性も十分あるのではないか。