2024年の米国株式はSP500指数の先週末時点で年初来18%と1980年以降の年平均10%と比較しても堅調なパフォーマンスと言えますが、7月以降はもみ合いの展開にあります。 一方で債券は米国総合債券指数で年初来5%と過去の年平均7%にせまっており、直近ももみ合いの株価を横目に高値更新の展開となっています。株式と債券が異なる動きをしているといえますが、今回のテーマは株式と債券のパフォーマンスの関係についてです。
この関係を見るのに両者の1ヶ月程度の相関係数を計算すると直近はマイナス、つまり株のリターンと債券のリターンとが違う方向にあることがわかります。最近の推移を見るとコロナ禍以降の相関係数は正である時間帯が多くありました。 2022年は株安と債券安(金利上昇)の関係、2023年は株高と債券高(金利低下)の関係が見られました。前者はインフレを嫌気するもの、後者はソフトランディングを期待するものと言えるでしょう。
なお、データをさかのぼると1990年代も正の相関が優位な局面でした。両者の関係は振れやすく、市場で値付けされるものであり、明確な関係を見出すのは難しいのですが、1990年代と2022-23年に共通するのはインフレです。 また、利上げ最終局面に相関が高まりやすい傾向も見られますが、ようやく物価の落ち着きとともに金融政策も変曲点にきています。
金利は経済の基礎体温という考え方に基づけば堅調な景気は株高と金利上昇(債券安)となるわけで、教科書的には株と債券は値動きも異なり分散投資効果が期待されるものです。実際にコロナ禍までは相関係数は基本的に負の状況にありました。 これまでの期待先行のマーケットはこれから現実チェックに入る段階にあり、景気を重視する結果、景気が良ければ株式選好、鈍化すれば債券選好といった低相関の関係が復活すると期待しています。
米国では運用資産の60%を株式、40%を債券に配分する資産配分ルールが長期運用や学術面でもベンチマークとされており、60/40ポートフォリオと呼ばれます。2022-23年に両者の相関が高まった際には分散投資効果が見られないことから60/40ポートフォリオの死とも呼ばれました。
「○○の死」は時折聞かれる言葉です。1970年代の米国株の長期低迷の際には「株式の死」とよばれ、2000年代にはバリュー株の相対的な不振から「バリューの死」という言葉がささやかれましたが、どれも皮肉なことに言われてしまうとともに復活を遂げてきました。
インフレ動向は予断を許さないものの、先行指数等を見る限り今後は落ち着いていくと期待されます。一番値上がりする資産クラスを多く保有していたい気持ちはもちろんありますが、どの局面でも安定的なリターンを築く分散投資の関係が復活している点には注目です。