景気減速懸念で9月2日週のS&P500は4.2%下落、コモディティ価格の下落にも波及
9月は株式市場にとって1年間で最悪の月と言われていますが、まさにその通りの展開となっています。前回のコメント「【米国株】市場の裾野が拡がる、S&P500のエネルギー・金融・素材セクターが上昇」で9月については、最初の10日間が、最後の10日間より下がりやすいことを説明しました。S&P500は先週(9月2日週)1週間で4.2%下落、2023年3月以来最悪の週となりました。
下げた理由としては、先週発表された経済指標が顕著に経済成長の鈍化を示唆する内容であったということ、そしてFRB(米連邦準備制度理事会)による利下げは、景気減速懸念を抑えることが十分なのかという投資家の懸念が浮上したためです。景気が減速しているという見方を受け、銅や原油などのコモディティ価格も下落しています。
エヌビディア[NVDA]、ブロードコム[AVGO]などの株価下落が市場全体の下落要因に
株式市場では先週特にテクノロジー株にとっては厳しい1週間となりました。9月3日(火)ブルームバーグは、米司法省がエヌビディア[NVDA]に対して反トラスト調査に関する召喚状を送ったと報じました。同社は人工知能アクセラレーター市場の約80%を占めています。4日(水)の引け後エヌビディアは司法省からそのような召喚状は受け取っていないと否定しました。9月のマーケットが下がりやすいなか、このような噂が株価を押し下げたのです。
また、9月5日(木)引け後に発表された時価総額10位の企業であるブロードコム[AVGO]の決算発表においては、ウォール街のアナリストたちの事前予想を上回ったものの、売上高のガイダンスが市場予想を下回りました。同社の株価は翌5日(金)には10%下落しています。これを受けて、地合の悪い市場環境のなか、半導体セクター、テクノロジーセクター、しいてはナスダック指数が下落、そして市場全体を引き下げた要因となりました。
今週(9月9日週)注目の3つのイベント
米国では9月に入ると証券会社主催による機関投資家向けのコンフェレンスが多く開催され、企業のトップが講演をすることが増えてきます。第3四半期の決算発表は10月の半ばまで始まらないため、このようなイベントが企業の株価を動かし、それが市場全体に影響を与えることもあります。
今週9月9日(月)には、アップル[AAPL]の新商品発表イベントが開催される予定です。このイベントでは、iPhone16シリーズやAppleWatchの最新モデルの発表が行われる見通しとなっています。また、新しいAirPodsなど、他の製品のアップデートがある可能性もあります。毎年恒例の秋の発表会で、多くのアップルファンが注目する大きなイベントです。
また、9月10日(火)は台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー(TSMC)[TSM]の月間発表が予定されています。これは同社の月ごとの売上高や生産動向をまとめた報告で、半導体銘柄が売られていることもあり、今回特に注目されています。
今週9月11日(水)に開催される予定となっているゴールドマンサックス[GS]のTMTコンファレンスではエヌビディアのCEOジェンスン・フアン氏の講演が予定されています。テクノロジーセクターが下落しているため、市場はフアン氏の発言に注視するでしょう。
米国大統領選後、米国株は史上最高値に向けて上昇再開の見込み
現在のマーケットのレベルはプット・コールレシオやブルベアレシオのような投資家心理を見てみるとまだ、市場底打ちのサインを示すほど悲観的にはなっていません。決算発表を終えた企業は積極的な自社株買いを行っており、先週4日間でもそのペースは増えているようです。会社自身が株価のサポートを提供しています。
政治においては、9月10(火)にABCニュース主催のトランプ氏とハリス氏の最初の討論会が行われます。11月5日の米国大統領選挙までの米国株は、歴史的なパターンのように不安定な状況が続くかもしれませんが、その後は年末までに史上最高値に向けて上昇を再開すると考えています。ですから、ここからの下げは長期投資家にとっては、時間の分散で米国株のポジションを作る好機会であると思っています。