モトリーフール米国本社、2024年9月2日 投稿記事より

ビル&メリンダ・ゲイツ財団トラストはマイクロソフトとバークシャー・ハサウェイに大きなポジションを保有している

ビル&メリンダ・ゲイツ財団は、医療制度の改善や教育の推進、貧困や不平等との闘いなど、世界中でさまざまな慈善活動を行っています。設立以来、同財団は総額で770億ドル超を拠出しています。

同財団の慈善活動の財源となっているのがビル&メリンダ・ゲイツ財団トラストで、財団へ寄せられた寄付金を管理・運用しています。2024年6月末時点において、同トラストは480億ドルの資金を23のポジションに分散投資していますが、ポートフォリオ全体の54%をわずか2銘柄が占めています。33%を占めるマイクロソフト[MSFT]と、21%を占めるバークシャー・ハサウェイ[BRK.B]です。

なお、同トラストの過去3年間の運用成績は、S&P500種指数のパフォーマンスを10%ポイント上回りました。アウトパフォームの最大の理由は、マイクロソフトとバークシャー・ハサウェイへの多額な投資にあるでしょう。また、現在の資産配分を見ると、共同議長であるビル・ゲイツ氏が依然として、これら2銘柄に強いに思い入れがあることを示唆しています。

両社について詳しく見てみましょう。

マイクロソフト[MSFT]:ビル&メリンダ・ゲイツ財団トラストの33%を占める

マイクロソフトは世界最大のソフトウェア会社です。ビジネスの生産性と企業のリソースプランニングの分野において、それぞれOfficeシリーズとDynamicsシリーズを通じて、特に強い存在感を示しています。また、それぞれのエコシステムに生成人工知能(AI)を搭載したコパイロットを導入し、新たな収益機会を生み出しています。コパイロットの顧客数は、2024年4~6月期に前四半期比で60%超増加しました。

さらに、Microsoft Azureはパブリッククラウドとして第2位の規模を誇ります。同社は、サイバーセキュリティ、データベース管理システム、ハイブリッドコンピューティングなど、いくつかのクラウド分野で存在感を示しています。調査会社ガートナー[IT]は先日、マイクロソフトをデータサイエンスと機械学習プラットフォームのリーダーに選出し、またMicrosoft AzureはオープンAIとの提携のおかげで、生成AIの開発者向けサービスにおいて優位的な地位を確保しています。

こうした強みを踏まえ、モルガン・スタンレーのアナリストはAzureが2027年までに、アマゾン・ドットコム[AMZN]の提供するアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)を抜いてパブリッククラウドのトップに躍り出る可能性があると予想しています。現状では、Azureの市場シェアは4~6月期に前四半期比で2%ポイント低下し、AWSとアルファベット[GOOGL]のGoogle Cloudがそれぞれ1%ポイント上昇しました。しかし、マイクロソフトのエイミー・フッド最高財務責任者(CFO)は、AIサービスの需要が供給を上回っているため、市場シェアの低下は、同社がインフラの構築に取り組んでいる間の一時的なものにすぎないとの見解を示しました。

マイクロソフトが発表した2024年度(6月期)第4四半期の業績は、予想を上回る内容でした。売上高は前年同期比15%増の647億ドル、GAAPベースの希薄化後1株当たり純利益(EPS)は同10%増の2.95ドルとなりました。売上高の伸びが純利益の伸びを上回ったのは、最近のアクティビジョン・ブリザードの買収により増収率が約3%ポイント上乗せされ、営業利益の伸び率が約2%ポイント押し下げられたためです。

気になる点としては、Azureの売上高が予想を下回ったことと、経営陣が2025年度第1四半期について予想を下回るガイダンスを示したことです。これを受けて株価は約5%下落し、まだ完全には回復していません。

今後について、ウォール街はマイクロソフトの利益が2027年にかけて年率15%で成長すると予想しています。この予想に基づくと、株価収益率(PER)35.3倍という足元のバリュエーションはやや割高に見えます。投資家は、ここで慎重になる必要があります。筆者の個人的見解としては、さらに15%下落して360ドル付近が次の検討のタイミングだと考えています。。

バークシャー・ハサウェイ[BRK.B]:ビル&メリンダ・ゲイツ財団トラストの21%を占める

バークシャー・ハサウェイは多様な子会社を傘下に置く持ち株会社であり、その中で最も重要なのが保険事業です。同社が初めて保険事業に参入したのは、1967年にナショナル・インデムニティを買収し、中核事業だった繊維事業から軸足を移した時です。それ以来、バークシャー・ハサウェイは保険フロートの世界的リーダーとなりました。保険フロートとは、加入者から集めた保険料のうち、保険金としてまだ支払われていない部分を指します。

バフェット氏は、規律ある保険引受、すなわち保険料収入が保険金支払いを概ね上回っていることにより、バークシャー・ハサウェイは「何も支払わずに」フロートを蓄積できていると述べています。実際、バークシャー・ハサウェイの第2四半期のコンバインド・レシオ(損害率と事業費率の合算)は87%であり、業界平均の101.5%を大幅に下回っています。コンバインド・レシオが100%未満ということは、保険引受の収益性が高いことを意味し、つまり、バークシャー・ハサウェイの保険引受が業界平均よりはるかに良好であることを示しています。

バフェット氏と、同社の投資マネジャーであるトッド・コームズ氏、テッド・ウェシュラー氏は、このフロートを投資し、長年にわたって大きな成果を上げてきました。バークシャー・ハサウェイは6月末時点で、2,350億ドル相当の米国財務省短期証券と2,850億ドル相当の株式をバランスシート上に保有しています。この大規模な投資ポートフォリオにより、バークシャー・ハサウェイの1株当たり純資産(BPS)は過去3年間に年率10.4%の成長を遂げ、S&P500種指数の年率8.3%上昇をアウトパフォームしています。

バークシャー・ハサウェイは第2四半期決算も好調でした。売上高は前年同期比1.2%増の937億ドル、営業利益(株式損益を除く)は同16%増の116億ドルでした。

今後について、ウォール街はバークシャー・ハサウェイの営業利益が2027年にかけて年率17%で成長すると予想しています。このコンセンサス予想に基づくと、1株当たり営業利益に対して24倍という足元のバリュエーションは妥当に見えます。優良なディフェンシブ銘柄を探しているのであれば、バークシャー・ハサウェイへの投資を検討する価値があるかもしれません。何しろ、ビスポーク・インベストメント・グループによると、同社は過去6回の景気後退期においてS&P500種指数を中央値で4.4%ポイント、アウトパフォームしているのですから。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。アマゾン・ドットコムの子会社であるホールフーズ・マーケット元CEOのJohn Mackeyは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。アルファベットの幹部であるSuzanne Freyは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。元記事の筆者Trevor Jennewineは、アマゾン・ドットコムの株式を保有しています。モトリーフール米国本社は、アルファベット、アマゾン・ドットコム、バークシャー・ハサウェイ、マイクロソフトの株式を保有し、推奨しています。モトリーフール米国本社はガートナーの株式、および以下のオプションを推奨しています。マイクロソフトの2026年1月満期の395ドルコールのロング、同2026年1月満期の405ドルコールのショート。モトリーフール米国本社は情報開示方針を定めています。