2024年8月27日(火)8:50発表
日本 企業向けサービス価格指数2024年7月

【1】結果:市場予想を0.1%ポイント下回り、前年比2.8%増

【図表1】2024年7月 企業向けサービス価格指数の速報値
出所:日本銀行よりマネックス証券作成

2024年7月の企業向けサービス価格指数は、前年比で市場予想を0.1%ポイント下回る2.8%増の結果となりました。前回6月の公表値(改定値)は、9年ぶりの3%台であったところ、勢いが弱まった格好です(図表1、2)。

大類した構成系列は、7系列あるうち、金融・保険を除く6系列において前回6月から増加幅を縮小しています。中身を見ると、好調であった宿泊サービスも足元では鈍化傾向がうかがえます(図表3、なお同品目の全体に対するウェイトは0.96%)。一部で弱まりが見受けられるものの、全体としては底堅く推移している印象です。

【図表2】企業向けサービス価格指数の推移(前年比、前月比、%)
出所:日本銀行よりマネックス証券作成
【図表3】宿泊サービスの推移(前年比、%)
出所:日本銀行よりマネックス証券作成

【2】内容・注目点:勢いは落とすも、依然2%後半で推移していることはポジティブ

寄与度を確認すると、その他に含まれる諸サービスが前回6月からマイナス0.14%ポイントと全体を押し下げています。上述の宿泊サービスの下押しが大きく、その他にもスポーツ施設提供サービスは前年比マイナス5.1%(6月、同3.3%)と、マイナス転換するなど下押しに寄与しました。

前回6月公表値から勢いを落とす品目が多くありましたが、宿泊サービスも依然13.5%と高水準であり、その他に人件費率の高いサービスも2%を超えて推移していることから、企業間のサービス価格は安定的に推移していると判断できるでしょう。

企業向けサービス価格指数の構成品目を、人件費の高低で二分した参考指数を確認すると、2指数ともに2024年は平均2.6%(1-7月平均)で推移しています(図表4)。

【図表4】企業向けサービス価格指数前月比の寄与度分解(前年比、%、%ポイント)
出所:日本銀行よりマネックス証券作成

低人件費率サービスは財など輸入物価等の影響を受けやすい指数とされており、足元のインフレ鈍化から縮小していく可能性が高いでしょう。一方で高人件費サービスは人件費の占める割合が大きく、2%を超えて推移していることは賃金への波及期待を持てる内容と言えるでしょう(図表5)。

【図表5】高人件費率サービス・低人件費率サービス(前年比、%)
出所:日本銀行よりマネックス証券作成

【3】所感:高人件費率サービスと所定内給与の相関、賃上げ基調は続くか

高人件費サービスはその名の通り人件費率が高く、当然所定内給与と相関が高いとされています(図表6)。構成品目をみると、教育訓練サービスや専門・技術サービスといったサービスで構成されており、直近ではこれらのサービスの上昇が確認できることをもって、日銀は賃金への波及を想定しています。

足元の企業向けサービス価格指数も3%に近い水準で推移していることは、高水準であった賃上げ動向が続く期待が持てると言えるでしょう。次なる確認点は、消費への波及で、消費が同様に上昇していくトレンドがうかがえるかが重要と考えます。

【図表6】高人件費率サービスと所定内給与(前年比、%)
出所:日本銀行、厚生労働省よりマネックス証券作成

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太