ジャクソンホール、パウエルFRB議長「政策を変更する時が来た」

市場の懸念材料であった経済シンポジウムのジャクソンホールが無事終了しました。8月23日(金)は、これまで市場を牽引してきた大型テクノロジー銘柄したのみならず、全てのセクターが上昇しました。23日(金)のマーケットの動きから言えることは、投資家はFRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長から聞きたかったことを聞けてホッとしたということです。パウエル議長は、「インフレについては目標達成し、これまで行ってきた引き締め政策を変更する時が来た」と述べ、2024年中に現在の5.25%-5.5%の政策金利(FFレート)を引き下げることを示唆しました。

ただ、発表される経済指標を1つずつ確認し金融政策の判断をするというこれまでのパウエル議長の方針を考えると、9月6日に発表が予定されている8月分の雇用統計が最後の判断材料となります。

そうするとマーケットの次の疑問は、FRBが9月のFOMC(米連邦公開市場委員会)でどれだけの幅の利下げを行うかということです。マーケットはすでに2024年末までに政策金利は4%に近づき、2025年の半ばまでには3.5%へ向かって利下げが起きるという1年間かけて利下げを行う可能性を織り込み始めています。方向性が見えていることもあり、9月に起きるであろうFOMCでの利下げ幅が25ベーシス・ポイント(0.25%)か、50ベーシス・ポイント(0.50%)になるかはさほど重要ではないかもしれません。

金利低下期待で、住宅建設会社が史上最高値を更新。今週はエヌビディア[NVDA]の決算に注目

金利の引き下げが期待されることで株式市場内でもそれを受けた動きが起きています。2023年秋に7%後半まで上昇した30年固定の住宅ローン金利が、先週には6%の半ばまで下落したこともあり、8月23日(金)に発表された新築住宅販売は先月発表分から10.6%増えています。今後の金利低下期待も相重なり、住宅建設会社のD.R.ホートン[DHI]、レナー[LEN]、トールブラザーズ[TOL]などは23日(金)に史上最高値を更新しています。また、利下げの可能性がより現実的になったということで、金価格も約25ドル上昇しました。

また、利下げの可能性が高まったことを受け、マーケットの裾野の広がりが継続しています。8月23日(金)にS&P500は1.2%上昇しましたが、小型株指数のラッセル2000は3.2%上昇しています。金利が下がる環境で小型株指数のラッセル2000が大型株指数のリターンを上回るのは、ラッセル2000採用企業のおよそ4割が赤字で、変動金利で負債の返済を行っているからだと言われています。また、S&P500の均等指数であるS&P500のイコールウェイト指数については、1.3%上昇し、史上最高値を更新しました。

ジャクソンホールが終わった今、次のマーケットのカタリスト(相場を大きく動かすきっかけとなる材料やイベントのこと)は、米国現地時間8月28日(水)引け後のエヌビディア[NVDA]の決算発表です。同社株は今や世界中のテクノロジー株の指標となっており、市場全体の方向性に影響します。現時点のウォール街のアナリスの予想では、EPSは0.67ドル前後、2023年の約2倍を超えると予想していますが、もっと重要なのは、決算発表後のマネジメントによる今後の見通しとなります。

バフェット氏への誕生日のプレゼントとなるか

先週8月23日(金)には、ウォーレン・バフェット氏が率いるバークシャー・ハサウェイ[BRK.B]の株価が史上最高値を更新しました。それによりバークシャー・ハサウェイの時価総額は9,772億ドルとなりました。バフェット氏は8月30日に94歳の誕生日を迎えますが、その頃には株式の時価総額が1兆ドルを超えてもおかしくありません。1兆ドルに達するまでわずか2.3%だけです。時価総額1兆ドル超えはバフェット氏にとって素晴らしい誕生日プレゼントとなります。果たしてマーケットはバフェット氏にそんなプレゼントをあげることになるのでしょうか。