投資をするにあたって参考にする株価指数、そのなかでも世界中の投資家が最も注目する株価指数のひとつがS&P500でしょう。2024年に入り新NISAが始まった日本では多くの方々が新規に米国株投資を始めたこともあり、株価指数としてのS&P500の知名度はますます高まったはずです。

株価指数というのは、長期的に見たとき、上がると景気は良く、下がると景気は悪いと、経済のバロメーターの役割を果たしています。S&P500に連動する投資信託やETFは多くの投資家に保有されていますから、当然ですが株価指数は下がるより、上がってくれた方が良い訳です。

そんな株価指数、実は上がるための仕組みがあります。正確に言うと上がるための仕組みではないものの、結果として上がるはずなのです。

その仕組みが株価指数のリバランスです。

株価指数のリバランスとは、株価指数に含まれる銘柄やその構成比率を見直し、必要に応じて変更することを言います。そもそも株価指数は、特定の基準に基づいて選ばれた複数の企業の株価を基に算出されていますが、企業の成長や市場状況の変化、経済全体の動向により、定期的に構成銘柄やその比率を調整する必要が生じます。わかりやすくいうと、将来性のない銘柄は指数から外され、今後成長が期待され株価が上がると思われる銘柄が採用されるのです。

S&P500のリバランスを決定するのは、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社の委員会です。この委員会は定期的に会合を開き、通常、3月、6月、9月、12月の四半期ごとにインデックスの構成を見直し、リバランスを行います。その判断基準は、銘柄の時価総額、流動性、財務的な健全性、また、指数がアメリカ経済全体を反映していることを確保するために、セクターの代表性も考慮されます。

2005年にはアマゾン[AMZN]が当時のEコーマースの大手プレイヤーとして、2006年には検索エンジン、オンライン広告最大手プレイヤーとしてグーグル(アルファベット)[GOOGL]、また2013年にはソーシャルメディアのプラットフォーム企業としてフェイスブック(メタ)[META]がリバランスの際にS&P500に採用されたのです。

今年生成AIテーマの代表格銘柄として、注目されているエヌビディア[NVDA]は2001年にS&P500に採用されています。これまで長期に渡ってS&P500が世界で最も上がった株価指数のひとつとなった理由は、こういった銘柄を採用し、その後その銘柄の株価が大きく上がってくれたお陰といえます。

株価指数のリバランスにより、元気のない疲れた企業には退場してもらい、将来性のある活きの良い企業が指数に採用され、株価指数の上昇を牽引しているのです。

株価指数の新陳代謝と言えるリバランスですが、今月末には世界株式市場の株価指数であるMSCI指数のリバランスが行われる予定です。その新規採用銘柄にはこれから株価指数の上昇に貢献してくれる銘柄が入っていることでしょう。