2025年1月、毎年ラスベガスで開催される世界最大の家電・テクノロジーの見本市であるCES(ConsumerElectronicsShow)を視察する機会を得ました。世界中から最先端のイノベーションが集まるこのイベントは、未来のテクノロジーに興味のある人々にとって、一日中いても飽きることのない大規模な展示会です。僕は2022年のコロナ明けから毎年参加しているので、技術のトレンドをみることができます。2025年は世界中から14万1,000人以上が参加し、世界150か国以上から4,500社を超える企業が出展したと言われています。来場者数は過去最多ということで、CESに対する興味が高まっていることが伺えます。特に中国や韓国からの企業数、参加者の数には圧倒させられます。
CESに出展する企業の狙いは様々です。例えば、発売直前の最終製品を発表する「新商品お披露目会」としての展示を目的とする場合があります。新車や新型テレビ技術などが代表的な例です。ある韓国の大手企業には特に勢いがあり、大規模なブースを構えて、これでもかというほどの大型スクリーンを展示し新技術を披露していました。そのために莫大な資金を使っています。彼らの技術の進化には圧倒されるばかりで、僕だけでなく多くの来場者がその進歩に驚いたことでしょう。余談ですが、これまで我が家では韓国製の電化製品を買ったことはありませんでした。しかし、ここまで素晴らしい技術を持つ会社のテレビならば、という思いから、ついに僕の部屋からは日本製のテレビが退場、代わりに韓国製のテレビが登場することになりました。
また、CESでは企業ごとに異なるアプローチで技術を披露しています。未来の構想を示すプロトタイプの展示の場合もあれば、現在テスト段階で来年の商品化を目指している技術であったり、すでに社会で活用され、現実世界で効果を発揮している実用化された製品の説明の場合もあります。過去には「これは未来の技術だ!」と注目を集めたものであっても、その後フェードアウトしてしまうケースもありました。一方で、着実に進化を続け、一般の消費者が手にする日が近いと感じさせるものも多数ありました。
株式市場では現在AIが大きな注目テーマとなっています。これまでAIはPC上のソフトウェアや目に見えないシステムとして存在していましたが、2025年のCESでは、ロボットにAIが搭載された「フィジカルAI」の時代を感じさせる展示が目立ちました。最も分かりやすい例が、自動運転車の進化です。数年前、CESで印象的だったのは、ZOOXという自動運転ミニバスでした。数年前、初めてZOOXのブースを訪れた際、彼らは一般道路での走行計画があると説明していました。2024年は、一般道路でのテスト運行中と説明が変わったのです。そして、今回は、ラスベガスを最初の商業市場として2025年後半に一般公開予定と発表しました。ついに、ロボタクシー(自動運転タクシー)のサービスを実用化するというのです。CESで目にした革新のなかで、単なるコンセプトではなく、私たちの未来を映し出すリアルな光景でした。実はこのZOOXはアマゾンの子会社であることを、今年初めて知りました。
ロボタクシーについては、米国では、すでにアルファベット(Googleの親会社)のWAYMOがロボタクシーサービスを開始しており、テスラも今年後半にテキサス州オースティンでサービスを開始する計画となっています。さらに、GAFAMの一角であるアマゾンも参入し、アメリカの大都市では「運転手のいないタクシー」が当たり前になる時代が到来しようとしています。アメリカでは、こうした技術は、もはや夢物語ではなく、現実のものとなっています。
AI搭載ロボット、それに自動運転車や、自動運転タクシー、これらが日常に溶け込む日、あなたはそんな世界を受け入れる準備ができていますか?