7月初旬~8月初旬の中国・香港株は調整局面が続く

2024年7月2日~8月5日までの中国株の騰落率は、上海総合指数は-4.5%、香港ハンセン指数が-6.0%となっています。引き続き、政策待ちの相場状態が続いています。

7月15日に発表された4~6月期(第2四半期)の国内総生産(GDP)成長率は4.7%増と5四半期ぶりの低成長にとどまり、市場予想の5.1%増や前期実績の5.3%増も下回りました。輸出は比較的堅調だったものの個人消費が振るわなかったことが低成長の要因となり、5%前後に設定されたGDP成長目標には支援策が必要と考えられています。

そこで注目されたのが、7月15日から開催された中国共産党第20期中央委員会第3回全体会議(三中全会)でした。ここで、何らかの経済刺激策が出ることが期待されたのですが、三中全会のコミュニケーションでは目先の経済対策がほとんど示されず、それが株価下落の要因となっています。

ただ、7月25日には中国人民銀(中央銀行)が中期貸出制度(MLF)の1年物金利を予想外に引き下げたことや(MLFの1年物金利は0.2ポイント引き下げられ2.3%に、同金利の引き下げは2023年8月以来)、7月26日には中国当局が、家電や自動車の消費拡大に向けて買い替え補助金制度の拡充を発表したことから中国本土株は香港ハンセン指数よりも若干緩やかな下落幅となっています。

そして、8月3日に中国政府は弱い内需を引き上げるため、個人消費を促進するための優先事項を発表しています。国務院は飲食および宿泊の消費(ケータリングなど)、ハウスキーピングサービス、高齢者介護と、文化と娯楽の消費(文化講演、オンラインゲーム、没入型体験など)、デジタル消費(無人小売店やセルフピックアップロッカーの育成、eスポーツやライブストリーミングeコマース)といった分野で基礎的消費を拡大させる可能性を探るなど、20の重要なステップを指定しています。

ただし、何らかの予算額が発表されているわけではないことや、米国発の世界的な株価下落の余波があって、発表後の初営業日である8月5日の株価は上海総合指数、香港ハンセン指数共に下落となっています。

経済指標は軟調な状態、優良株は割安な状態が続く

7月に発表された中国の経済指標はまちまちでした。まず、6月15日に発表された6月の鉱工業生産は前年比5.3%増と前月の5.6%増は下回ったものの市場予想の5.0%増は上回って着地。6月の小売売上高は前年比2.0%増と前月の3.7%増や市場予想の3.4%増よりも低い実績となり、内需の低迷が色濃く示されました。

6月の固定資産投資は3.9%増と、前月実績の4.0%増は下回りましたが、市場予想の3.9%増と同じでした。7月31日に発表された中国国家製造業PMIは49.4と前月実績の49.5や市場予想の49.4と同じレベルの実績で、非製造業PMIは50.2と前月実績の50.5や市場予想の551.5を下回るものでした。

さらに、8月1日に発表された7月のCaixin中国製造業PMIは49.8と、市場予想の51.5や前月実績の51.8を下回り、景況感の境目である50も下回っています。7月のCaixin中国サービス業PMIは52.1と、こちらは市場予想の51.5や前月実績の51.2を上回っています。

今後の中国株ですが、やはり政策次第と言えるでしょうか。もちろん世界的な株安の余波は受けると思いますが、ここまで大きく上昇が続いてきた日本株と異なり、中国株は下落が続いてきたために割高感がありません。したがって、世界的な株安の余波は比較的受けにくいと言えるでしょう。ここで大きな予算を伴う大型の景気刺激策が出てくれば、株価は上昇トレンドに転換できるとも思えます。

さらに、企業業績はそこまで悪化していないため、例えばですが、宝飾品販売店で大手の六福集団(00590)の予想配当利回りは8%超、予想PERは5倍前後、中国3大石油企業の1つである中国海洋石油(00883)の予想配当利回りは7.5%、予想PERは5.7倍、商業銀行最大手の中国工商銀行(01398)は予想配当利回り5%以上、予想PERは6.0倍、最大の時価総額を誇るテンセント(00700)でも予想配当利回り1%以上、予想PERは15.7倍、上場保険会社では時価総額最大の中国平安保険(02318)でも予想配当利回り8%以上、予想PERは4.7倍となっています。

今回の世界的な株価急落の余波を受けてさらに下がるようなら、業績の良い優良株は引き続き買いのチャンスが続くと言えるのではないでしょうか。