2024年7月25日(木)8:50発表
日本 企業向けサービス価格指数2024年6月

【1】結果:前年比で市場予想を3%上回る
 

【図表1】2024年6月 企業向けサービス価格指数公表値
出所:日本銀行よりマネックス証券作成

2024年6月の企業向けサービス価格指数は、前年比で市場予想を0.3%ポイント上回る3.0%増となりました。前年比3%の上昇は、2015年3月以来9年4ヶ月ぶりの水準です。また、2023年8月以来、11ヶ月連続で2%を上回っており、直近1年間におけるサービス価格の上昇が確認できます。一方で前月比は、前回公表値(5月分データ)から2ヶ月連続で0%の結果であり、足元のサービス価格の物価上昇は鈍化していることも見て取れます。

【図表2】企業向けサービス価格指数の推移(%)
出所:日本銀行よりマネックス証券作成

【2】内容・注目点:インバウンドや人件費転嫁が押し上げの主因と考えられる

今回の企業向けサービス価格指数を押し上げたのは、宿泊サービスや土木建築サービス、廃棄物処理(図表3中では、その他に分類)といったサービスでした。宿泊サービスはインバウンドの影響で上昇しており、今回の6月公表値では前年比26.8%と突出した上昇となりました。また、土木建築、廃棄物処理、それ以外にも教育訓練サービスなどの項目で上昇が見受けられます。これらは、人件費の上昇分を価格転嫁しているものと推察できるでしょう。

【図表3】企業向けサービス価格指数前月比の寄与度分解(前年比、%、%ポイント)
出所:日本銀行よりマネックス証券作成

今回、広告・関連サービスの上昇が目立つ結果となりました。実際に前年比の推移を確認しても、6.9%増と急騰しています。広告は、テレビ・ラジオやインターネット広告といった項目が含まれます。一般的に、広告宣伝費は出稿企業の収益状況に左右されるもので、今回6月のデータだけでは判断しきれないものですが、引き続き広告関連サービスの価格の上昇が確認できれば、企業収益にも期待ができるため本系列のトレンドに注目します。

【図表4】広告・関連サービス価格の推移(前年比、%)
出所:日本銀行よりマネックス証券作成

【3】所感:消費者向けサービスの上昇が鍵

先週発表された6月の全国消費者物価指数では、サービス価格(前年比)の底打ちが見て取れる内容でした(図表5)。企業向けサービス価格指数は均してみると右肩上がりで、企業間サービスに対して消費者向けサービス(以下、CPIサービス)への価格転嫁が、直近では見受けられない印象でした。企業向けサービスが9年ぶりの3%台であったこともあり、CPIサービスも同水準とは言わないまでも、上昇が期待されます。賃金上昇の原資として、サービス価格への転嫁に言及をする企業が増えていることもあり、先行きも緩やかに上昇していくものと考えています。

【図表5】CPIサービスと企業向けサービス価格指数の推移(季節調整前、前年比、%)
出所:日本銀行、総務省よりマネックス証券作成

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太