7月30、31日に日銀の金融政策決定会合が開催されます。今回は6月の会合で決めた国債買い入れ減額の具体策が協議されることになりますが、それよりも焦点となるのは、政策金利の追加利上げに踏み込むかどうかです。

政府要人から利上げ圧力が高まる

政府の要人からは、日銀への利上げ圧力が高まっています。岸田文雄首相は7月19日に経団連が開催した夏季フォーラムで「金融政策の正常化が経済ステージの移行を後押しする」と事実上の利上げ催促発言をしました。

また、河野太郎デジタル相もブルームバーグ通信のインタビューで「日銀は政策金利を上げる必要がある」との見解を示し、後ほど発言を修正しました。

更に、自民党の茂木幹事長も講演で「段階的な利上げの検討も含めて金融政策を正常化する方針をもっと明確に打ち出す必要がある」と語りました。

3人に共通するのは、日銀の利上げスピードが他国に比べ遅れることによる円安進行を懸念していることです。

しかし、日銀の金融政策は為替レートのコントロールが目的ではなく、国内経済の状況から判断されるべきものです。国内のインフレ率は2%台に上昇しているものの、実質賃金は伸びておらず、拙速な利上げは日本経済にマイナスとなるリスクが存在します。

また、今回利上げに踏み切ると日銀が政府の圧力に屈したと見なされ、日銀の独立性に対する疑問が出てくる可能性もあります。月末の日銀の政策判断は、マーケットの不確定要素の1つです。

想定内の国債買入れ減額、想定外の政策金利の引き上げ

日銀の国債買入れ減額による金融引き締めは長期金利の上昇をもたらしますが、これは既にマーケットにはかなり織り込まれています。

問題は政策金利です。もし、7月中に日銀が引き上げることを決定すれば想定外の変更であり、短期金利上昇によるマーケットへの影響が大きくなると思います。

金利上昇は株式、債券、不動産にマイナス

金利上昇は理論的には割引率の引き上げになるため、株価にはマイナスの影響となります。債券も金利と価格は逆方向に動くため、市場金利の上昇は債券価格の下落につながります。

不動産も借入金利の上昇によるローン返済負担の増加と物件の収益還元評価レートの上昇から価格にはマイナスです。唯一、上昇の可能性があるのは、為替の円の評価です。

円安トレンドが円高に転換の可能性

日本政府の為替介入に対する警戒は引き続き残っていますが、介入ルールが不透明であることから、米ドル買いのリスクを認識する投資家も増えています。

金利差を利用したいわゆる「キャリートレード」によって収益を積み上げてきた投機マネーもここにきてリスク回避のために米ドル買いの取引を抑える動きに出ています。

もし、日銀が7月末に想定外の政策金利引き上げに踏み切れば、円高が進む可能性が出てきます。さらにそのタイミングで、追加介入の可能性も否定できません。

不安定化するマーケットに慎重な対応を

マーケットの不安定要因は日銀の金融政策だけではありません。海外の政治リスクも高まっています。米国ではバイデン大統領が選挙戦からの撤退を表明し、共和党のトランプ氏が有利とされていました。

しかし、民主党もハリス副大統領の候補者指名が固まり、巻き返しの可能性も出てきました。選挙戦は混沌とした状態になっています。もし、今後トランプ氏が劣勢となれば、マーケットは再び想定外の変化に翻弄されることになります。

このように国内外で不確定要因が増えて、当面は以前より変動率の高いマーケットになることが予想されます。そのため、資産全体のリスクを以前より抑え、保守的なスタンスで資産運用を続けていくべき局面だと思います。