先週の動き:ニューヨーク金先物価格、国内金価格ともに最高値更新も「行って来い」状態に、週末に向けポジション調整の売りが加速したNY金

先週のニューヨーク金先物価格(NY金)は、終値、取引時間中ともに過去最高値を更新した。7月16日に2,467.80ドルと終値ベースでの最高値を約2ヶ月ぶりに更新し、7月16日(2,474.40ドル)、17日(2,488.40ドル)と連日で取引時間中の最高値を更新した。7月17日の値動きは午前中の米連邦準備制度理事会(FRB)ウォラー理事の利下げに前向きな発言を受けたものだった。ところが、この高値を境に売り優勢に転じ、上げ幅を削りながら相場は進行し、この日の終値は2,459.9ドルだった。

翌7月18日は2,450ドル超の水準を維持したものの、7月19日は主要な経済指標の発表もなく、手掛かり材料は連日続いたFRB高官の発言内容ぐらいであったにもかかわらず、下げ幅が拡大し、前日比57.30ドル安の2,399.10ドルと節目の2,400ドル割れで終了した。

米東部時間の7月18日夕刻から19日を通し、米国からアジア、欧州にかけてシステム障害が連鎖的に発生したことと無関係ではないとみられる。実際にNY金は時間外の7月19日のアジア時間からロンドン午前、NY早朝にかけて、約12時間ほぼ取引(電子ブローキング)が中断する事態となった。NY時間早朝に再開されたが、その時には売りが膨らんでいて2,420ドル割れとなった。その後株式市場が開き、こちらもリスクオフ・センチメントの高まりの中で下げが加速すると、金市場もさらに売りが先行し2,400ドルを割り、週末の終値は前日比57.30ドル安の2,399.10ドルで終了した。

NY金の週足は前週末比21.60ドル、0.9%安となった。2,400ドルをやや上回る水準から最高値まで駆け上がり、引けは前週末比マイナス圏に沈み、いわゆる「行って来い」状態になった。レンジは、2,399.10~2,488.40ドルと大きく拡大した。想定レンジを2,405~2,480ドルとしており、ほぼその動きとなったが、週末の引けは2,420~2,460ドル程度を見込んでいた。

一方、国内金価格もNY金同様に「行って来い」状態となった。国内金価格は、NY金の動きに合わせ7月17日に一時1万2679円と最高値を更新、終値も1万2565円と更新した。週末の終値は1万2308円で週足は前週末比36円、0.3%安となった。レンジは1万2210~1万2679円と想定レンジとした1万2200~1万2550円の上限を100円余り上振れした。東京時間の週末のドル円相場は157円台半ばで終了したが、もう少し円高方向での終了を読んでいた。

北米マネー、金ETFに再流入か

先週は北米投資マネーの金市場への流れを見る上での指標の一つ、金ETF(上場投資信託)の最大銘柄「SPDR(スパイダー)ゴールド・シェア[GLD]」の残高に動きがあった。取引時間中の高値を更新した7月16日一日で5.49トンの残高増が確認された。実は7月に入って以降同銘柄の残高は徐々に増えており、先週末時点で10.96トン増となっている。「北米」とするのは理由がある。

以前も取り上げたが、欧米の投資家は2024年3月まで8四半期にわたり、金ETFを売り越してきた経緯がある。その累計は736トンにも上っていた。月次ベースで見ると5、6月と欧米は増加に転じており、資金の戻りが期待された。ただ、これは欧州での増加が引き上げたもので、北米は資金流出が続いていた。それだけに7月がこのままプラスに転じるのか、北米のSPDRゴールド・シェアの取引動向が注目される。この銘柄は東証(1326)にも上場されている。

1週間で急増していたファンドのロング(買い建て)

こちらも北米投資マネーの金市場への流入の話となるが、週末のNY金大幅続落の背景でもある。

先週末、米商品先物取引委員会(CFTC)が発表したデータによると、7月17日時点でのNY金のファンドのポジションは大幅な増加となっていた。CTA(商品投資顧問)など短期筋がネット685トンの買いで前週比89トンの増加。その他を含む全体ではネット897トンで前週比103トンの大幅増となっており、7月11日の米6月消費者物価指数(CPI)の発表以降に9月利下げをフルに織り込む形で先物買いが膨らみ、最高値の更新に至ったことが分かる。当然、買われ過ぎということで高値警戒感につながり、日々の出来高の増加からロングの拡大について一定の推測はできたが、思った以上に多かった。

毎週火曜日がデータ集計日だが、7月10日のNY金の終値が2,367.90ドルで、1週間後の17日が2,467.80ドル。この間に99.90ドルの上昇だったが、背景に103トンものロングの増加があったわけだ。ただし、手掛かり材料として9月利下げ観測以外に、タイミングとしては株式など金融市場で見られた「トランプ・トレード」と呼ばれる、第2次トランプ政権発足を読んだトレードと一部重なったこともあった。

モメンタム相場に乗り最高値更新となったのはいいものの、「さて?この上は誰が買うの?」ということで、追随なく反落した。下がり始めるとCTA特有の「トレンドフォロー型」で流れに沿って、プログラムが判断し行動することから、一転投げ売りで値を崩すパターンとなっている。何か事件事故が発生し急騰急落するイベント型の上下動に似た動きと言える。ドル指数(DXY)や米長期金利の動きと連動しない、金市場の内部要因主導型の下げと言えるもので、一時的な買われ過ぎの解消というパターンである。7月17日以降の出来高を見るとポジション整理が進展しているとみられる。

今週の見通し:米個人消費支出(PCE)コア価格指数、4~6月期GDP速報値に注目。NY金2,395~2,460ドル、国内金価格1万2165~1万2450円を想定

翌週に米連邦公開市場委員会(FOMC)を控え、今週は焦点のインフレ指標の発表が控える。7月26日には6月の米個人消費支出(PCE)価格指数(デフレーター)が発表される。FRBがインフレ指標とする食品とエネルギーを除いたコア指数が注目となる。市場予想は2ヶ月連続で前月比0.1%上昇となっている。前年同月では2.5%上昇と前月の2.6%上昇から鈍化する予想となっている。仮にそうなると3ヶ月間の年率換算コア指数は今年に入ってから最も緩やかなペースに鈍化する。軸足を利下げ方向に移したとみられるFRBにとっても、好ましいデータということになる。NY金は2,400ドル超の水準を固めることになりそうだ。

インフレ関連では7月25日の4~6月期の米国内総生産(GDP)速報値も注目となる。市場予想は前期比年率換算で1.9%と、1~3月期の1.4%を上回る見込みとなっている。こちらも過去3ヶ月間のPCEデフレーターが注目される。あわせて個人消費の伸びにも注目したい。

今週の想定レンジは前半中心にファンドの手じまい売りを想定し、NY金が2,395~2,460ドル、国内金価格は1万2165~1万2450円とみている。投機筋が買いついた後の修正局面と言えるが、売りをこなしながら切り上げた2,400ドル超を維持するとみる。

【図表】金 縦軸:円建て金/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券