市場規模が拡大するデータセンター
生成AIの普及にともない、日本国内でもデータセンターの開発が加速している。一般社団法人電子情報産業協会が公表した資料によれば、日本国内のデータセンター市場は2025年の4兆円超から2030年には5兆6000億円を超え、年率で5.4%増加する見込みとなっている。
市場規模の拡大に伴い、J-REITにデータセンター投資を後押しする制度整備が進んでいる。データセンターは建物内の電源設備やサーバーなど、期間が短い減価償却資産の比率が高い。減価償却費は会計上の費用となるため、投資家に分配できる利益がデータセンターの場合は他用途と比較して少なくなる。
J-REIT市場では、減価償却費を投資家に分配(利益超過分配)する場合の上限を6割とする規制がかかっている。REITがデータセンター投資を加速するため、この規制の上限を撤廃する方向で規制緩和が実現する方向となっている。
データセンターは市場規模が急速に拡大している用途であるが、同様の用途としては物流施設が挙げられる。2005年に初めての物流特化銘柄である日本ロジスティクスファンド投資法人(8967)が上場した時には、テナント需要への懸念もあった。しかし現在では、J-REIT市場でオフィスにつぎ、2割弱を物流施設が占めている。したがって、データセンター特化型銘柄が上場すれば、拡大するテナント需要を取り込むことが可能となる点が投資家としての魅力となりそうだ。
安定性の課題が表面化するリスク
ただし、REITの用途としてデータセンターには課題が多い。物流銘柄が登場した時と同様ですが、テナント代替性が低いという点がまず挙げられる。このリスクを緩和するには、テナントと長期の固定賃料契約を締結する必要があるが、物流系銘柄が登場した時とは異なり現在の市場はインフレに対抗できる賃料上昇が求められている。つまりデータセンター特化型銘柄が上場するには、時期が悪いと考えられるのだ。
さらに、前述の利益超過分配の上限撤廃もJ-REITとしての投資魅力を損なう可能性がある。J-REITは利益の9割以上を投資家に分配する仕組みという点で、運用側の恣意的な分配方針変更のリスクがないという点が投資家にとっての安心材料だ。
一方で利益超過分配は、この文字の通り利益とは異なる減価償却費を投資家に分配するものであり、運用側が恣意的に変動することが可能となっている。言い換えれば、データセンター特化型銘柄は上場当初は利益超過分配を高い比率で投資家に分配していたとしても、市場動向によっては利益超過分配を行わないという選択肢を運用側が持つことになる。
J-REITと同様の仕組みであるインフラファンドでは、すでに同様の変更が起きている。インフラファンドは、2016年の市場開設時から分配金に占める利益超過分配の比率が高い銘柄が多かったが、FIT(固定価格買取制度)終了時期が迫っていることを理由に、利益超過分配を停止している。この分配方針変更は、上場時には投資家に対して停止時期が明記されていなかったため、突然の方針変更となった。データセンター特化銘柄でも同様の変更が起きる可能性があり、REIT投資に求められる安定的な分配と相反する課題が露呈することもありそうだ。
