モトリーフール米国本社、 2024年6月30日 投稿記事より

エヌビディア[NVDA]のGPU採用のメモリー

エヌビディア[NVDA]は1年半で株価が10倍近くに上昇し、今や時価総額は3兆1000億ドルとなり、S&P500種指数全体の6.7%を占めます。エヌビディア製半導体はAIを支える原動力となっています。

しかし、エヌビディアの株価は、数年後の予想利益と比べてもかなり割高な水準になっています。AIで恩恵を受ける半導体メーカーはエヌビディアだけではなく、業界内を探せば、もっと割安な別の会社が見つかるかもしれません。そうした銘柄の1つがマイクロン・テクノロジー[MU]です。

エヌビディアの画像処理装置(GPU)はAIの開発に不可欠です。そして、そのGPUにおいて重要な要素がメモリーチップです。メモリーチップの機能は基本的にAIモデルが短期的に記憶し、訓練目的やユーザーがチャットボットに質問した時に、即座に呼び出せるような状態でデータを保存しておくことにあります。

マイクロン・テクノロジーは、データセンター向けに世界をリードするHBM3Eを製造しています。「HBM」はhigh-bandwidth memory(広帯域幅メモリー)の頭文字です。HBM3Eのアーキテクチャは、DDRのような旧世代のメモリーと比べて帯域幅が大きく、それでいて物理的な面積が小さく、エネルギー消費量が少ないという特徴があります。これは、膨大なデータを迅速に転送しながら、電力コストを削減できることを意味します。どちらもデータセンター運営者にとって、重要な要素です。

マイクロン・テクノロジーのHBM3Eは非常に効率的です。エヌビディアは、旗艦製品であるH100の2倍の速度でAIモデルの推論(ライブデータの取り込みと予測)ができる新型のH200など、最新のGPUにマイクロン・テクノロジーのHBM3Eを採用しています。

データセンター向けは1年後まで受注済み

先日発表されたマイクロン・テクノロジーの2024年度第3四半期(3~5月期)決算では、データセンター向けHBM製品の売上高は1億ドルでした。会社側は、HBM全体の売上高は2024年度(8月期)通期で数億ドル、2025年度には数十億ドルに達すると予想しています。実際、2025年の出荷分はすべて受注済みとのことです。

マイクロン・テクノロジーにとって、AIによる事業機会はデータセンターにとどまりません。AI対応PCは、従来型PCよりも80%も多いメモリー(DRAM)容量を必要とします。マイクロンによると、マイクロソフト[MSFT]の新しいAI対応Copilot+ PCには最低でも16GBのDRAMが搭載されています。旧世代PCはオプションで8GBでした。同様にAI対応スマートフォンも、従来機種と比べて2倍のメモリー容量を必要とします。

こうしたトレンドは、マイクロン・テクノロジーにとって大きな収益機会につながります。

四半期売上高は前年同期比80%増

マイクロン・テクノロジーの第3四半期売上高は、前年同期比81%増の68億ドルでした。増収率は第2四半期の57%増から加速しており、AI需要がいかに急速に高まっているかを物語っています。

数字を深掘りすると、さらに目を見張るものがあります。4つある部門のうち最も大きく、データセンターを含むコンピュート&ネットワーキング部門の売上高は前年同期比85%増でした。モバイル部門はさらに驚異的な伸びを見せ、世界の主力スマートフォンメーカーが旗艦製品へのAI搭載を競う中、売上高は94%増を記録しました。

マイクロン・テクノロジーは利益も好調です。第3四半期の1株当たり利益(EPS)は0.30ドルの黒字となり、前年同期の1.73ドルの赤字から大転換を遂げました。これは、経営陣のガイダンスレンジの上限である0.24ドルも上回る結果でした。

前述の通り、HBM3Eなどの製品は2025年末まで完売となっており、そうした需給の逼迫からマイクロン・テクノロジーには価格決定力があり、値上げも可能です。それが第3四半期の収益性の改善につながり、この追い風は少なくとも2025年にかけて続くと思われます。

ウォール街では「買い」判断が7割

マイクロン・テクノロジーの株価は年初来で72%上昇しており、過去最高値付近にあります。ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、マイクロン・テクノロジーをカバーするアナリスト38人のうち、27人が同社の投資判断を最高評価の「買い」としています。さらに7人がオーバーウェイト(強気)、2人がホールドを推奨しています。残りの2人はアンダーウェイト(弱気)としていますが、「売り」を推奨するアナリストは1人もいません。

2024年度の通期業績は、年初の消費者関連部門の在庫過剰を原因とする不調が響いて悪化が予想されます。しかし、アナリストは早くも2025年度に目を向けています。2025年度のEPSは9.06ドルが見込まれており、6月26日の終値142.36ドルに基づくと、予想株価収益率(PER)は15.7倍です。

参考として、上場投資信託(ETF)のiシェアーズ・セミコンダクターETFの足元のPERは35.9倍、エヌビディアの予想PERは46.6倍です。

マイクロン・テクノロジーのHBM3Eメモリーはエヌビディアの最新GPUの多くに搭載されている重要部品であることから、エヌビディアの好調を予想するならば、マイクロン・テクノロジーも検討する価値はあるかもしれません。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Anthony Di Pizioは、記載されているどの企業の株式も保有していません。モトリーフール米国本社はマイクロソフト、エヌビディア、iシェアーズ・セミコンダクターETFの株式を保有し、推奨しています。モトリーフール米国本社は以下のオプションを推奨しています。マイクロソフトの2026年1月満期の395ドルコールのロング、同2026年1月満期の405ドルコールのショート。モトリーフールは情報開示方針を定めています。