モトリーフール米国本社、2024年6月18日投稿記事より
人気ETFも年初来16%下落のアーク社だが
2020年に大成功を収め、米国で最も幅広くフォローされるグロース株投資家の1人となったキャシー・ウッド氏ですが、今は元の軌道に戻ろうと奮闘しています。アーク・インベストメント・マネジメント(以下、アーク社)の共同創業者でCEOを務める同氏にとっても、それは簡単なことではないようです。アーク社が運用する上場投資信託(ETF)は、過去3年のうち2年で市場を大幅にアンダーパフォームし、2024年も大きく遅れを取っています。
最も人気のあるETFも年初来で16%下落していますが、これで引き下がるウッド氏ではありません。6月17日、同氏のポートフォリオではいくつかの動きがありました。アマゾン・ドットコム[AMZN]、パランティア・テクノロジーズ[PLTR]、ページャーデューティー[PD]の株式を追加購入したのです。3社について詳しく見てみましょう。
アマゾン・ドットコム[AMZN]株価は年間47%上昇
大手オンライン小売企業であるアマゾン・ドットコムは現在、かつてほどの急成長企業ではなくなっています。1997年の上場以来、売上高は一度の例外もなく毎年伸び続けていますが、2022年の前年比9%増と2023年の12%増は、上場からの27年間で最も低い増収率でした。
アンディ・ジャシーCEOは、Eコマース企業の成長サイクルにおける現段階なりの、最大限の努力をしています。コスト削減による効率向上や、エンゲージメントを高めるためのAIの活用に取り組んでいます。こうした取り組みは成果を上げており、2024年第1四半期の売上高は前年同期比13%増にとどまりましたが、利益は3倍超に増加しました。
アマゾン・ドットコムは、この低成長環境にあってもなお馬力は健在です。過去4四半期の間に488億ドルに上るフリーキャッシュフローを生み出しました。しかし、そうしたキャッシュの一部を株主に還元する準備はできていないようです。アマゾン・ドットコムは配当政策を取っていない、時価総額が最大の米国企業となっています。
しかし、投資家はそれでも問題ありません。彼らが望んでいるのは資本増価であり、株価は過去1年間で47%上昇しています。
以前よりも競争の激しい市場でアマゾン・ドットコムが優位に立つには、数々の課題があります。実店舗を構えるチェーン店は、オンライン販売にうまく対応できるようになっています。驚くほどの低価格を提供する、中国系Eコマース・プラットフォームの人気も急上昇しています。アマゾン・ドットコムの第1四半期の製品売上高は、前年同期比でわずか7%増でした。2桁の売上成長を達成することができたのは、クラウドサービスで圧倒的優位に立つアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)をはじめとするサービス売上高が好調だったおかげです。
アマゾン・ドットコムはアーク社のポートフォリオの中でも特に小さいポジションの1つです。アマゾン・ドットコムの株価は年初来で市場をアウトパフォームしており、もしウッド氏がもう少し大きなポジションを持っていたら、アーク社を取り巻く状況は変わっていたかもしれません。
対商業部門も伸びるパランティア・テクノロジーズ[PLTR]
アーク社が大量保有するすべての銘柄が下落しているわけではありません。ウッド氏の10大保有銘柄の1つで、諜報機関向けにソフトウェアツールを提供するパランティア・テクノロジーズは、年初来で市場をアウトパフォームしています。それどころか、2023年初来で株価は4倍近くに上昇しています。
市場はまだ、パランティア・テクノロジーズの可能性に追い付いていません。6月17日には、アーガス・リサーチのアナリスト、ジョセフ・ボナー氏が同社株を買い推奨としたことを受け、株価は6%上昇しました。ボナー氏は、パランティア・テクノロジーズが従来の公共部門だけでなく、民間の商業セクターにも進出していることで、株価上昇の余地が大幅に拡大するとみています。2024年第1四半期には、商業部門向け売上高は前年同期比40%増となり、全社売上高の21%増と比べて2倍近い成長率となりました。
ボナー氏は、2024年にパランティア・テクノロジーズの収益力が大幅に上昇し、キャッシュフローが急増するとみています。しかし、株価は決して割安ではありません。ボナー氏の予想利益に基づく2024年予想株価収益率(PER)は76倍であり、2025年予想PERでも63倍と、かなり割高です。
ページャーデューティー[PD]は株価底打ち感
最後に挙げるページャーデューティーは、クラウドベースで企業向けに分析やシステムの監視を提供する企業で、年初来で株価は8%下落しています。
売上高は7四半期連続で伸び率が鈍化しており、かつては前年同期比34%増だったのが、直近では8%増となっています。しかし、株価は5月に底打ちして以降、20%近く上昇しており、最近もあるアナリストが投資判断を引き上げたところです。
免責事項と開示事項 記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。アマゾン・ドットコムの子会社であるホールフーズ・マーケット元CEOのJohn Mackeyは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。元記事の筆者Rick Munarrizは、記載されているどの企業の株式も保有していません。モトリーフール米国本社はアマゾン・ドットコム、ページャーデューティー、パランティア・テクノロジーズの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。