2024年6月19日(水)8:50発表
日本 貿易収支2024年5月
【1】結果:輸出が伸びるも1.2兆円の貿易赤字に
2024年5月の貿易収支はマイナス1兆2,212億円と2ヶ月連続で貿易赤字となりました。輸出、輸入ともに前年から金額をそれぞれ伸ばす結果ですが、輸出金額はBloombergが集計する前年比市場予想12.7%を超え、13.5%と高水準の結果となりました。輸入金額は前年比市場予想9.5%であり、市場予想通りの結果となりました。
【2】内容・注目点:アメリカからの輸入が増加傾向
足元、円安を起点とする輸入物価の上昇が注目されています。前年比ベースでみると上述のように、輸出の方が円安の恩恵を受けているように見て取れます。前年比ベースの輸出金額に寄与したのが、自動車などの輸送用機械や、半導体製造装置といった電気機器が寄与しています。
輸入金額は食料品や鉱物性燃料、原動機などの一般機械が輸入金額に寄与しています。季節調整値でみた前月比ベースでは輸出が1.2%増・輸入が1.5%増と輸入金額の方が、上昇率が大きく、やはり足元では輸入額が伸びていると言え、赤字幅を拡大に寄与しました。
国別に、貿易指数(金額)をみると輸出では足元EU向けの輸出が減少しています。一方で輸入ではアメリカからの輸入が頭一つ抜けている印象で、これらの推移も貿易赤字の一因と考えられます。
【3】所感:為替動向はまだ円安傾向か、貿易黒字は生産拡大起点の輸出増次第
貿易収支は2ヶ月連続で赤字となる結果でした。貿易赤字自体は悪いことではありません。食料品やエネルギー関連など依存度の高い品目がある以上、ある程度、貿易赤字で推移するものと考えられるでしょう。
為替動向はもちろん影響しますが、為替は輸出・輸入双方向に影響があるものです。為替の水準は通貨の魅力や各国の金利差によるものですが、先週日銀の金融政策決定会合を通過し、日銀起点での金利差縮小は見送られました。7月会合を経るまで円高要因となる材料もないことから、向こう1ヶ月も輸出にはポジティブ、輸入にはネガティブな状況が続いていくものと考えられます。
貿易に関して言えば、足元の円安の改善が見えてきたとしても、上述の通り、輸出・輸入双方個に影響があるため貿易赤字の改善となるかは不明瞭なところで、改善にあたっては日本の産業自身の伸長を起点とした輸出の拡大が鍵となります。
マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太