2024年5月、米国でイーサリアム現物ETFの承認が大々的に報じられた。 実際には一部の規則変更に関するフォームが承認されただけだが、その後立て続けにブラックロックら申請企業が最終版となるS-1フォームを申請し、いよいよ実現が間近という期待が高まっている。 これを受けてイーサリアムの価格は高騰し、日本円建てでは1ETH=62万円を突破して史上最高値を更新した。

このように米国でイーサリアム現物ETFの進展がみられた背景には、前回5月13日付のコラム米国で暗号資産規制の動きが再び、大統領選でも立場が分かれる』でも紹介した、米国大統領選挙における政治的な思惑があるとされている。 今や米国で暗号資産界隈は有権者として無視できない規模になっている。そのため、最近になってトランプ前大統領が暗号資産の支持者層を取り込もうとする動きを見せたことで、バイデン大統領も暗号資産に対する厳しい姿勢を変えざるをえない状況になっている。

この勢いのまま、米国ではイーサリアムの次に現物ETFが承認されるアルトコインはどの銘柄かという議論が沸き起こっている。しかし、これについては冷静になる必要があるだろう。

これまでのビットコインとイーサリアムの現物ETFに関する審査では、どちらも、Howeyテストで「証券」に該当しないことと、伝統的な先物取引所であるCMEとの間で取引監視協定が締結されていること、現先価格に相関性があることなどが重視されている。 つまり、証券性のない資産かつCMEでの運用実績がある資産でなければ、現物ETFとしては認められないということになる。

この観点で他のアルトコインを見てみると、ソラナやカルダノ、ポリゴンをはじめ多くの銘柄はSECによって未だに証券性が疑われている。 また、ビットコインとイーサリアムを除いてどの銘柄もCMEには上場しておらず、仮にある銘柄が追加で上場したとしても、評価のための実績を積むまでには数年間はかかるだろう。米国でその基準が見直される可能性はあるが、2024年内か2025年までにその他の現物ETFが承認される可能性は低いだろう。

一方で、米国に倣ってビットコインとイーサリアムの現物ETFを取り扱う国は今後も増えるだろう。4月には香港、5月には英国、6月にはオーストラリアで同様の上場投資信託の取引がスタートした。 これらの国でも米国と似た基準でまずはビットコインとイーサリアムに限定されているが、現物ETFが米国以外の地域に広がることで、さらなる資金流入とともに相場を押し上げることが期待される。