AI関連銘柄で「持たざるリスク」が改めて注目を集めている。ソフトバンクグループ(9984)やOpenAI、オラクル[ORCL]は米国AIインフラに巨額を投じ、エヌビディア[NVDA]もGPU需要の急拡大で株価は過去最高水準にある。こうした一連の動きは、AIテーマを保有していないこと自体がパフォーマンス上のリスクになるとの認識を市場に浸透させている。この動向を踏まえ、暗号資産においても「持たざるリスク」という視点から考えてみたい。

真っ先に浮かぶのはビットコインである。世界的にドル離れが進むなか、代替的な価値保存手段としての役割が企業や機関投資家を含む幅広い主体から意識され始めている。もし各国の外貨準備にビットコインが組み入れられるようになれば、その需給構造は大きく変わり、保有していないことがむしろリスクに転じる局面が訪れる可能性がある。

同時に、金融市場の基盤としてのブロックチェーンの存在感も高まりつつある。米国を中心に株式や債券、不動産といった伝統的資産のトークン化が加速しており、その裏側を支えるのがイーサリアムやソラナといったネットワークである。将来的に金融市場の標準的インフラとなる可能性を踏まえれば、これらを保有しないことが投資家にとっての劣後リスクとなる場面が想定される。

さらに、トークン化市場はブロックチェーン単体で完結するものではなく、周辺技術が不可欠である。決済領域ではステーブルコインが注目を集めるほか、資産の保管やアクセスを担うウォレット、外部データをブロックチェーンにつなぐオラクル、そして異なるチェーン同士を接続するクロスチェーン技術といった様々な基盤が、デジタル資産取引の信頼性と利便性を下支えしている。AIブームにおいて半導体やデータセンターといった周辺インフラが相場を牽引したように、暗号資産市場においてもこうした領域が新たな投資テーマとして浮上することも考えられる。

足元ではAIがもっともわかりやすい投資トレンドであるが、暗号資産市場においても「持たざるリスク」という考え方は着実に広がりつつある。金融市場の再編を見据え、ビットコインはもちろんのこと、イーサリアムやソラナなどのブロックチェーン、さらにはその周辺領域をどう資産配分の中に位置づけるかは、今後の投資戦略において避けて通れないテーマとなるだろう。