6月1週目は順調に推移

6月1週目の米国株は堅調に推移しました。

S&P500は6月5日(水)に5,354ポイントをタッチし史上最高値を更新、また、7日(金)は5,375ポイントまで上昇し、ザラ場中の史上高値を更新しました。ナスダック100も6月5日(水)には引け値ベースで史上最高値、そして7日(金)にはザラバ中に史上最高値を更新と、強い展開となりました。先週1週間でS&P500は1.32%の上げ、ナスダック100は2.5%の上げです。

先週マーケットが注目していた雇用統計は、5月の新規雇用者数がウォール街のコンセンサスである18万人を大きく超え、27万2000人の増加でした。経済の強さを証明した一方で、失業率の方は4月の3.9%から今回は4%へ増えており、強さ一辺倒の経済指標ではありませんでした。これを受け10年債利回りは6月7日(金)に若干上昇したものの、最終的に4.43%という前週末より低いレベルで1週間を終えています。

マーケットの今週の注目は、6月12日(水)に予定されている連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策会合です。CME(シカゴ・マーカンタイル取引所) のFedWatch Toolによると、政策担当者は来週および7月末の会合で金利を再び据え置くことを予想しています。

先週も牽引役はエヌビディア[NVDA]

先週のマーケット上昇のドライバーになったのがエヌビディア[NVDA]です。先週1週間でエヌビディアの株価は10%上昇。6月5日(水)には、エヌビディアの株価も史上最高値を更新し、時価総額3兆ドル達成、これまで2位だったアップルの時価総額を抜き、ついに時価総額で世界2位となりました。

この事実だけでも驚異的なのですが、より注目するべきはエヌビディアの時価総額が2兆ドルから、3兆ドルまで増えた期間はたったの66取引日なのです。同社は記録的な短時間で1兆ドル(およそ156兆円)という価値を創造したのです。156兆円と言われてもイメージがつきにくいですが、日本の2023年1年間のGPDの約4分の1ですから、これは相当な額です。

エヌビディアの先週の株価の引け値は1,208.88ドルです。現在のウォール街のアナリストのエヌビディアのコンセンサス目標株価は1,208.50ドルですから、ちょうど今の株価と同じであり、コンセンサスによると同社の株価はフェアバリューと判断できます。しかし、エヌビディアの目標株価を1,500ドルへ引き上げる証券会社も出てきており、期待感は高まる一方です。

エヌビディアは今週6月10日(月)には10対1の株式分割を実施します。先週6月7日(金)引けまでの株主は、本日1株につき9株ついてくることになります。株式分割により、エヌビディアの企業価値は変わらないものの、1株から投資ができる米国株で、これまで1株約1,200ドル(約19万円)必要だったのが、120ドル(約19,000円)へと減ることで、個人投資家が買いやすくなります。

S&P500は2024年に入り12.2%上昇していますが、もしエヌビディア1銘柄がなかったとすると、リターンは8%となってしまいます。また、もしもマグニフィセント7銘柄(※)が存在しなかったとすると、S&P500の12.2%の上昇率は4.5%となってしまうのです。2024年の上げはエヌビディアとマグニフィセント7銘柄のおかげなのです。

エヌビディアのバリュエーションはITバブル時より割安

そんなエヌビディアについて、気になるのは同社のバリュエーションです。さぞかし割高になったと思われる投資家の方も少なくないと思います。2024年のコンセンサス予想EPS(1株利益)を使うと、現在のPER(株価収益率)は45倍です。

2025年のコンセンサス予想EPSを使うと34倍、2026年の予想EPSを使うと30倍くらいとなります。
つまり、時間の経過とともに、エヌビディアの株価には割安感が出てくる計算になります。エヌビディアのバリュエーションのピークは、ITバブルのときに66倍まで上がっていますからその当時と比べると現在の株価は決してバブルではないと考えます。

ただ、万が一投資家の期待を裏切るようなことがあると、株価はこれまで上げが激しかった分の反動が起きるリスクもあることを心に留めておくべきでしょう。私はAI銘柄の上昇が今後数年は続くと考えていますので、株価の調整は長期的な視点で投資をしたい投資家にとっては絶好の機会であると思います。

今週はアップル[AAPL]のWWDC(世界開発者会議)が行われます。アップルはAIの分野で他社より出遅れていましたが、今回AI戦略を発表するとみられています。当面のAIの機能としては独自の開発ではなくOPEN AIの技術を活用し、iPhoneの販売増加を目指すとみられています。現在アップルのデバイスは、世界中で月間22億台が使われています。

現在のiPhoneユーザーの40%のiPhoneは購入されてから4年以上経っており、いつ買い替えが起きてもおかしくない状況です。iPhoneにこれまでなかったAI機能を搭載することで、買い替えサイクルにもポジティブな影響を与えることになるでしょう。

(※)アップル、マイクロソフト[MSFT]、アルファベット[GOOGL]、アマゾン・ドットコム[AMZN]、メタ・プラットフォームズ[META]、エヌビディア[NVDA]、テスラ[TSLA]