5月後半は史上最高値からミニ調整

5月の後半米国株市場はミニ調整を経験しました。先週の米国株のセンチメントは良くなく、5月31日(金)のお昼くらいまで下落基調が続いたのですが、その後マーケットは回復し、最終的にはポジティブなトーンで1週間を終えています。

S&P500は5月21日に5341.88ポイントまで上昇、ザラ場中の史上最高値を更新しました。その後はというと、市場では利下げに対する懸念が支配的となり、株価は下落に転じることになります。先週前半もその流れは続き、5月31日(金)の日中にはその日の安値である5191.68ポイントへ下落しました。これにより史上最高値からの下落幅は2.8%となりましたが、S&P500は50日移動平均線にタッチする直前でリバウンド、この日の底値から引けまでに1.7%戻し、取引を終えました。

ナスダック100についても同じような動きを取りました。同指数は5月23日に18,907ドルで史上最高値を更新し下落に転じます。先週5月31日(金)には昼過ぎまでに前日比で1.9%下落、史上最高値からは3.8%下落したのですが、やはり50日移動平均線の上でリバウンド、この日の安値から引けまでに1.9%上昇、ほぼフラットで1日を終えたのです。

PCE(米個人消費支出)はインフレ低下を示唆

5月31日(金)は先週のマーケットが注目していた4月のPCE(米個人消費支出)の発表がありました。コアPCE価格指数はマーケットの予想通り前月比0.25%増を発表、インフレの低下を示唆するものです。住宅費用を除くコアPCEは前月比+0.22と、前月の+0.31%と比べ下がっています。前年比でも前月の+2.19%から今回は+2.15%となっており、住宅費用以外のインフレは目標通りとなっています。

市場の予想通りの発表を受け、寄り前にマーケットはポジティブに反応し上昇したものの、ザラ場中にマーケットは下落、その後午後になって上昇という動きを取ったのです。この様な株価の動きに影響を与えたのは、アルゴリズム取引か、機関投資家の月末のアセットアロケーションの見直しと考えられます。

1週間でみるとS&P500は0.51%の下げ、ナスダック100は1.44%の下げとなりました。先週の下げにも関わらず、5月の1ヶ月で見るとS&P500は4.8%上げ、ナスダック100は6.28%となっています。

デルとセールスフォースに失望売り

先週のマーケットの中でネガティブなセンチメントを与えたのはデル・テクノロジーズ[DELL]とセールスフォース・ドットコム[CRM]の決算発表でしょう。5月29日(水)に決算発表を行ったデルの株価は翌日1日で18%下落、5月30日(木)に発表されたセールスフォースも翌日ほぼ2割下落しました。

デルの決算発表はアナリストの事前予想を上回ったものの、AI関連のサーバー事業の売り上げは市場の期待を大きく上回るものでなかったため、失望売りに繋がったようです。セールスフォースについては、会社が四半期売上高の伸びが同社史上最も鈍化すると発表したことを受け、同社がAIブームから取り残されるとの懸念が再燃し、株価は下落しました。これは同社の株にとって約20年ぶりの大幅な下落でした。

これまでエヌビディア[NVDA]以外のIT銘柄もAI関連銘柄として買われていますが、市場の期待を少しでも裏切る決算を発表すると、株価が下落する可能性があることを投資家は心に留めておくべきでしょう。

年間で最も上がりやすい3ヶ月

第1四半期の決算発表についてはS&P500採用銘柄のうち490社の発表が終わっており、3.9%の事前増益予想に対し7.8%の増益という結果となっています。

7月の半ばから発表が本格化する第2四半期の見通しについては、いつもよりポジティブな展開が起きています。通常、翌四半期の見通しについては、決算発表が終わってからの2ヶ月間で下方修正が起きるのが普通なのですが、今回については0.3%ポイントの上方修正が起きたのです。

過去5年間を見てみると前期の決算発表が終わった後の2ヶ月間で、予想EPSは平均2.8%ポイントの下方修正が起きました。過去10年では平均2.7%ポイント、20年の平均では3%ポイントとそれぞれ下方修正が起きているのです。ですから、今回のように次回の決算発表前に、業績の上方修正が起きるのは珍しいことなのです。前回上方修正が起きたのは2021年第3四半期のことでした。その時は第3四半期の発表が行われた9月末から12月までの3ヶ月間でS&P500は10.65%上昇しています。

5月20日のこのコラムでも紹介しましたが、6月から8月末までの米国株はサマーラリーが期待されます。

【図表】S&P500の3ヶ月ごとの季節性(大統領選挙の年 1928年以降)
出所:BofA

上記は1928年からこれまでの大統領選挙の年のS&P500の3ヶ月毎のパフォーマンスです。大統領選挙の年の6月から8月までの3ヶ月間では、S&P500は平均75%の確率でプラスと、1年間でもプラスになる確率が最も高いことに加え、平均リターンも7.27%上昇と、1年間で最も株価が上がりやすい3ヶ月間の始まりとなります。