モトリーフール米国本社、 2024年5月27日投稿記事より

チャブ[CB]新規投資の陰で

ウォーレン・バフェット氏は、1965年にバークシャー・ハサウェイ[BRK.B]のCEOに就任して以来、投資家に年平均19.8%の複利リターンをもたらしてきました。パートナーだった故チャーリー・マンガー氏の「素晴らしい企業を適正な価格で買う」というアドバイスに従ってきたおかげです。これらの企業は、コングロマリットとして成長し続けるバークシャー・ハサウェイの100%子会社として、あるいはポートフォリオに含まれる株式投資先として名を連ねています。

バークシャー・ハサウェイは証券取引委員会から、フォーム13F(保有銘柄の報告書)を通じて四半期ごとに株式ポートフォリオの保有状況を公開することが義務付けられています。バフェット氏のポートフォリオを見ると、多くの素晴らしい投資アイデアが詰まっており、ポートフォリオ・マネジメントに対する同氏の考え方を知ることができます。

バフェット氏は2023年第3四半期に、いくつかの重要な動きを見せました。アップル[AAPL]株を売却し、損害保険会社チャブ[CB]に新たに投資したのです。さらに、すでに大量保有しているオクシデンタル・ペトロリアム[OXY]とリバティーシリウスXM[LSXMA]の株式を追加購入しました。

しかし、バフェット氏が行った最も大きな2つの買い物については、ポートフォリオに表れていません。同氏がバークシャー・ハサウェイの資金をどこに投資しているかを知るには、直近の四半期決算報告書を深く調べる必要があります。

23四半期連続で自社株買い

バフェット氏が2018年半ばから過去23四半期にわたって連続して購入している銘柄があり、2024年第1四半期も例外ではありませんでした。同氏は2024年第1四半期に、26億ドルを投じてバークシャー・ハサウェイの自社株を購入したのです。これは、単一銘柄の購入額として、他のどの銘柄よりも多い金額です。ただし、リバティーシリウスXMのクラスA株とクラスC株を合計すると、購入額は26億ドルを上回ります。

バークシャー・ハサウェイの取締役会は、2018年に自社株買いプログラムを改定し、保守的な判断基準に基づいて、株価が1株当たりの本源的価値を下回るとバフェット氏が考える限り、自社株買いを行えるようにしました。バランスシート上に300億ドル以上の現金があれば、バフェット氏は適切と思うだけの自社株を買うことができます。

バフェット氏は過去6年間にわたり、他のどの株式投資よりも多くの金額を自社株買いに充ててきました。自社株買いが行われるたびに、中核事業である保険事業、鉄道事業、株式ポートフォリオ、キャッシュフローを生み出すその他の事業ポートフォリオといった、バークシャー・ハサウェイが保有する全資産に対する株主の持分は大きくなります。

自社株を買うというバフェット氏の決定は、過去5年間、株主に大きなリターンをもたらしています。現在、株価は過去最高値付近で推移しており、これは過去の自社株買いが相対的にお買い得だったことを意味します。バークシャー・ハサウェイの足元の予想株価収益率(PER)は約19倍であり、株価は今も割安感があります。保有現金と株式ポートフォリオを除くと、中核事業の評価額は3,220億ドルとなり、当該事業の2023年営業利益の9倍にもなりません。

バフェット氏が今後も自社株買いを継続する可能性は高く、結果的に、バークシャー・ハサウェイの利益に対する株主の持分は高まるばかりです。

現金と短期米国債も積み増し

多くの人は、バフェット氏が保有する最大の銘柄はアップルだと思っていることでしょう。しかし、過去1年ほどは別の資産がその座を占めています。バークシャー・ハサウェイのバランスシートには、現金と米国財務省短期証券(T-bill)で合計約1,890億ドルがあります。これに対し、アップル株の保有額は約1,500億ドルです。

バフェット氏は第1四半期にもT-billを追加購入しました。アップル株を一部売却し、売却益の大半をT-billの購入に充てているほどです。株式の売却と、バークシャー・ハサウェイの中核事業が生み出すキャッシュフローを加味すると、現金およびT-billは第1四半期だけで210億ドル以上増加しました。

T-billは、バフェット氏が通常、優れた投資先を探している間に現金を預けておく場所です。T-billは満期1年以下の米国債を指しますが、バフェット氏が保有するT-billは6ヶ月以下がほとんどです。一般的に、T-billは金利が低い代わりに、満期が短いために柔軟性が高いというメリットがあります。しかし、現在は、将来的に金利が低下するとの見通しから長期国債よりもT-billの方が、利回りが高く、バフェット氏にとってプラスに働いています。

しかし、バフェット氏が様子見しているのは、金利の高さが理由ではありません。バークシャー・ハサウェイにとって優れた投資機会が市場に見当たらないのです。過去3四半期の間にチャブの株式を大量に購入しましたが、発行済み株式の6%超を買い占めたにもかかわらず、保有ポジションはわずか約69億ドルにすぎません。バフェット氏にとって目下最大の課題は、時価総額で国内第7位の上場企業となったバークシャー・ハサウェイに目立った変化をもたらすほどの大型の投資先を見つけることです。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Adam Levyはアップルの株式を保有しています。モトリーフール米国本社は、アップル、バークシャー・ハサウェイの株式を保有し、推奨しています。モトリーフール米国本社はオクシデンタル・ペトロリアムの株式を推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。