エヌビディアの2024年2-4月期の決算は予想を大きく超える決算で時間外株価は上昇
AI時代をリードする画像処理半導体(GPU)の最大手エヌビディア[NVDA]が5月22日(水)の米国市場引け後に発表した決算は予想を超える決算でした。2024年2-4月期の売上高は260億4400万ドルと市場予想の246億9200万ドルを上回りました。純利益(GAAP)も148億8100万ドルと市場予想の131億5000万ドルを上回り、1株あたりの純利益(調整後)も6.12ドルと、市場予想5.65ドルを大きく上回りました。
また、2024年5-7月の売上高が280億ドル前後になるとの見通しを示しましたが、こちらも市場予想の268億ドルを上回るものでした。さらに1対10の株式分割と四半期配当を150%増の1株あたり10セントにすることも発表しました。これによって、エヌビディアの時間外の株価は急騰しています。さらにナスダック100指数に連動する上場投資信託(ETF)も上昇しており、ハイテク株を中心に株式市場全体に好影響をもたらす決算だったと言えるでしょう。ジェンスン・フアン最高経営責任者は決算発表資料で「次の産業革命が始まった」「AIは、ほぼ全ての産業に大幅な生産性向上をもたらし、企業のコスト効率とエネルギー効率の改善および収益機会の拡大に役立つだろう」と述べています。
ChatGPTが転換点に(2022年からの決算結果を振り返る)
2022年から本格的なAI相場が始まる
エヌビディアは、現在の株式市場の大きなトレンドである人工知能(AI)ブームの中心的な銘柄です。過去を振り返ると2022年11月~2023年1月期のエヌビディアの四半期決算が「AI相場」の号砲を鳴らしたと思います。その頃、半導体メーカー各社はスマホ不況で減収減益相次ぐ状況でしたが、2022年11月に登場した ChatGPT が話題となり、そこへAI関連のエヌビディアが予想を上回る利益を出しました。それまで2四半期続けて決算発表後に売られたエヌビディア株は、市場予想を8%超えたサプライズ利益によって、発表後に大きく上昇しました。続く2023年2-4月決算は2023年5月24日に発表され、まだ半導体不況によって前年同期比で減収減益だったものの、市場予想平均を+19%以上も上回る利益で連続サプライズとなり、本格的にAI相場が始まりました。エヌビディアが他のAI関連銘柄を引っ張る相場です。
2023年8月にはAI向け半導体でシェア8割
2023年8月に発表された2023年5-7月決算では、前年同期比で特大の増収増益に転じ、特に売上高が倍増したことに衝撃が走りました。単に市場予想を上回っただけでなく、実際にAIが同社売上の激増に寄与していることが初めて明らかになった時でした。エヌビディア以外の半導体メーカーは相変わらず不況で減収減益でしたが、AI向け半導体で先頭を走り、シェア8割と言われる同社が独り勝ちの状態となっていることが示されました。その後も2023年8-10月期、2023年11月~2024年1月期、そして今回の2024年2-4月期と一段とアクセルを踏み込むような増収増益が続いています。
売上予想、2028年1月期には2024年1月期の3.2倍を予想
今回発表された2024年2-4月期の業績も市場予想を大きく上回る業績であり、2024年5-7月期の見通しも同様で、時間外でエヌビディアの株価は大きく上昇しています。非常に明るい状況が訪れており、AI需要が同社を別次元の規模の半導体メーカーへと押し上げていることは疑いの余地ありません。
このあとも長期的にAI需要は増え続け、エヌビディアの売上はさらに増えるでしょう。市場をほぼ独占し、確かに高い価値を持っていると考えられます。市場予想による売上予想や1株あたりの純利益の予想を見ても、2028年1月期には2024年1月期の3.2倍になると予想されています。今後もAI市場の膨らみ次第ではさらに業績見通しは上方修正されていく可能性もあるでしょう。
エヌビディアの株価水準は割高か?
同社の株価はこれまで大きく上昇してきました。時価総額は既に2.3兆ドル(2024年5月22日時点)に達しており、マイクロソフト、アップルに次ぐ、米国3位の大きさです。今回の決算発表によってこれはさらに上昇していくでしょう。では、この株価水準が割高か?という点ですが、単純に2024年5月22日時点の株価である949.50ドルを2028年1月度の市場平均予想EPSである38.9ドルで割ると24.4倍と出ます。これと同じように、4年後の市場予想EPSで株価を割った予想PERを算出すると、時価総額トップのマイクロソフト[MSFT]で23.7倍、時価総額2位のアップル[AAPL]で22.5倍であることを考えると、横の比較では一概に割高であるとは言えなさそうです。
今後、エヌビディアの株価はどうなるか
株価動向は、もちろん今後の業績次第です。しかし、現在FRBのバランスシートがコロナ前の水準から、まだまだ大きく膨らんでいる状態であること、セルインメイ期間であるにもかかわらず米国の主要株価指数が最高値を更新していること(これには最大の買い手である企業の自社株が大きく膨らんでいるであろうことも要因の1つではあると思いますが)、金余りの過剰流動性相場であり、2024年の大統領選挙がそれを補佐しているような状態です。したがって、株価は一段大きく上昇する可能性があります。
もちろん、米国のインフレ率が予想以上に上昇して金利上昇見通しが再燃したり、FRBのバランスシートがなんらかの理由で急激に縮小したりすることになれば、AIブームで上昇しているエヌビディアを中心としたテクノロジー株は大きく調整することもあるでしょう。しかし、その点は現在、予想できるものではありません。今のままの状況が続くのであれば、目先はAIブームが再加速する可能性があると思います。
【投資入門者向け】エヌビディアの企業概要を分かりやすく解説
画像処理半導体(GPU)を設計・開発
同社は一貫してGPUという画像処理半導体を設計・開発します(同社は工場を持たないファブレス企業で、製造は台湾積体電路製造が行っています)。当初はその名の通り動画やアニメーションなどを表示するためのチップとして、プレイステーションやXboxなどビデオゲーム向けが主力でした。そしてこのGPUの持つ多数の小型チップコアを並列で動作・処理できるという特性を、AIをはじめとする高度な計算を求められる用途にも活かす道が開けてきたのです。
2010年代前半にグーグルが囲碁や将棋で人間を負かすようなAIを開発したように、ディープラーニングと呼ばれる大量データを扱うシステムにエヌビディアのGPUが欠かせないものとなってきました。具体的にはGPUをCPUと組み合わせ、アクセラレート(加速化)されたコンピューティング技術です。
AI市場において、シャベルとツルハシを提供する企業
それは大規模データセンターを使ってクラウドサービスなどを展開するネット企業や、ビットコインのマイニング作業、仮想現実、自動運転技術などにも使われ、そしてChatGPTの登場で生成AIブームが起こりました。これらすべてでアクセラレートされたコンピューティング能力が求められます。この需要をエヌビディアのGPUは一気に取り込んだのです。AIの黎明期よりエヌビディアのGPUが大きなシェアをとってきたために、その開発環境が他社の半導体では活用しにくい点も見逃せません。つまり、エヌビディアはAI市場において、シャベルとツルハシを提供する企業であるとも言えるでしょう。
後編では、【半導体】エヌビディア決算速報後編:レーザーテック、ブロードコムーー次の有望株を探せ!をお届けします