米金利高はゴールドにとっては売り材料。金利がつかないゴールドはドルに劣る、というのがセオリーでしたが、何故かこの3月以降ドル建てゴールドが猛烈に上昇。その背景には中国人民銀行(中央銀行)の金購入などが指摘されていましたが、中央銀行の買いは下値を支えることはあっても価格を押し上げるなどということはありません。では一体急騰の買い手は誰だったのか?

ミステリアスバイヤーの正体は「中国の投資家」だった、というのがわかってきました。

金現物の国際指標価格は17世紀から取引の中心地となっているロンドン市場の「ロコ・ロンドン」価格ですが、上海黄金交易所(中国の金現物取引所)の金価格は2024年4月12日、ロコ・ロンドン価格に対し89ドルものプレミアムとなりました。国際指標価格より中国で取引されている金現物価格は89ドルも高い、ということです。つまりそれだけ需要が強い。通貨人民元安、中国株安、不動産下落で中国の投資家は投資先がないのです。資産の目減りを回避するには資金を金に振り向けるしかない、というのが実情のようです。

週明けから金価格は急反落となっていますが、イスラエルとイランの本土攻撃という地政学リスクの一段の緊張の高まりはない、との安心感から地政学リスクのプレミアムが剥落したことも一因ですが、4月中旬から中国の金先物取引所である上海期貨交易所の証拠金が引き上げられたことも影響しているようです。上海期貨交易所の出来高・取組高は2024年に入ってから急増、あまりに取引が加熱していることが中国国内の金価格の高騰を助長し、89ドルものプレミアムとなっていたということですが、ここにメスがはいりました。これによる中国の投資家のポジション解消が金価格の急落を演出したとも考えられるのです。

中国やロシアの影響でコモディティ価格は一物一価ではなくなってしまいました。金利高だから金は上がらないはずだというのは過去のロジック。欧米の投資家も中国市場で何が起きているのかウォッチする必要がありますね。