モトリーフール米国本社、 2024年 4月16日投稿記事より

グロース投資家のキャシー・ウッド氏は巻き返しを図っている

キャシー・ウッド氏は、広く注目されているファンドマネジャーです。アーク・インベストメント・マネジメント(以下、アーク社)の共同創業者で、CEOを務める同氏は、積極的な投資スタイルが爆発的リターンをもたらしたことで、2020年に一躍有名になりました。2023年以降、同氏は市場をアウトパフォームすることをひたすら目指していますが、同氏が本気を出せば、その力は絶大です。

アーク社は運用する上場投資信託(ETF)の日次取引を公表しており、これを見れば、ウッド氏の投資戦略を垣間見ることができます。4月15日には、ロク[ROKU]、テラドック・ヘルス[TDOC]、ブレード・エアー・モビリティ[BLDE]を購入したことがわかります。3社について詳しく見てみましょう。

ロク[ROKU]の決算予想は良好

「勝った時の興奮と負けた時の絶望」。これは、ABCの人気スポーツ番組Wide World of Sportsの冒頭で使われている表現ですが、2023年以降のロクの投資家にも当てはまるようです。ストリーミング・プラットフォームを手掛けるロクは、2023年第1四半期から第3四半期にかけて売上高が加速的に伸びたことを受け、株価が2023年に2倍超に上昇し、投資家は興奮しました。

ところが、2024年になると負けた時の絶望に取って代わりました。同社の株価は、年初来で36%急落しています。最大の原因は、2月に発表した2023年第4四半期決算が低調だったことです。売上高の伸びは鈍化し、ユーザー当たり平均売上高は減少し、同業他社が小規模プレーヤーの買収で合意したことで新たな競合が出現しました。

とはいえ、株価回復のチャンスは近いと思われます。来週には、2024年第1四半期の決算発表が予定されています。アナリスト予想は極めて好調で、売上高は伸びが再び加速して、前年同期比20%増となる見通しです。また、四半期の純損失は半分未満に減少すると見込まれています。

同社のプラットフォームの視聴者は引き続き増えており、エンゲージメントは依然として強力です。良好な決算と、その後の説明会(4月25日午後の予定)の内容によっては、株価が再び上向く可能性があります。ウッド氏は、決算に先んじて買いに動いたのかもしれません。

CEO交代のテラドック・ヘルス[TDOC]

オンライン医療サービスのパイオニアであるテラドック・ヘルスは、最近の状況があまり良好ではなく、トップが交代しても力強い鼓動を生み出せていません。株価は、2021年初頭に付けた過去最高値から96%も下落しています。4月16日も、7年ぶりの安値を付けたところです。

テラドックの不調は、それほど過去のことではありません。同社は、パンデミックの初期に遠隔医療が注目されたことで急成長しましたが、病院や診療所が診察を再開すると一気に下火になりました。売上高は11四半期連続で減速し、2024年第1四半期のオンライン診療利用者数は前年同期比で8%減少しました。

同社は4月5日、ジェイソン・ゴレビッチCEOの退任を発表しました。取締役会は後任が決まるまでのCEO代行を指名しています。トップが交代すると、低迷していた株価が息を吹き返すことがよくありますが、テラドックでそれは起こりませんでした。同社は4月25日に第1四半期決算発表を予定していますが、好業績となる見込みは薄いとみられます。業績が好調ならCEOを解任する必要はないはずです。しかし、新CEOに関して明るいニュースがあれば、株価は持ち直す可能性があります。

ブレード・エアー・モビリティ[BLDE]は2000万ドルの自社株買い

もう1社、2024年に株価回復が期待されているのはブレード・エアー・モビリティです。ヘリコプターによるハイエンドの輸送サービスをオンデマンドで提供する同社は、2023年第4四半期決算が期待外れとなり、目先のガイダンスも精彩を欠いたことを受けて、3月に株価が急落しました。

短距離の移動で渋滞を回避したい富裕層向けや、臓器輸送などの緊急ニーズに特化した同社は、2021年と2022年度の通期売上高が前年比で2倍以上に増加したことで注目を集めました。しかし、2023年に入って事業は減速し始め、2024年3月に発表された第4四半期の売上高は、予想を下回る前年同期比25%増にとどまりました。

会社側は2024年の通期売上高を2億4000万~2億5000万ドルと予想していますが、これは前年比でわずか7~11%の増加にすぎず、市場予想をも下回ります。ブレード・エアは、2025年には2桁の増収率を回復すると見込んでいます。赤字も続いていますが、バランスシート上の現金は潤沢で、足元の企業価値は実績売上高を下回っています。

会社側も株価を割安と見ており、失望を招いた決算発表の1週間後に2000万ドル相当の自社株買いを発表しました。ブレード・エア株を追加購入したことから判断すると、ウッド氏もおそらく同意見と思われます。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Rick Munarrizは、ロクの株式を保有しています。モトリーフール米国本社はロク、テラドック・ヘルスの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。