先週の動き:国内外ともに史上最高値更新 イースター連休前にニューヨーク金先物価格急騰

先週のニューヨーク金先物価格(NY金)は、週間ベースで大幅反発となった。イースター(復活祭)前の祭日(グッドフライデー)で3月28日が月末と四半期末の取引となったが、週足は78.40ドル、3.6%高の2,238.40ドルで終了した。3月27日に中心となる取引(中心限月、Active month)が4月物から6月物に変更され、6月物の価格には金利裁定のプレミアムが20ドルほど乗った形ではあるが、当日は2,212.70ドルと初めて終値で2,200ドル台に乗せた。翌日3月28日の取引は続伸し、前述のように史上最高値を更新し2,238.40ドルで終了したが、その後の時間外取引で上げ足を加速した。一時2,256.90ドルと取引時間中の最高値を更新し、時間外取引は2,254.80ドルで終了した。ほぼ高値引け状態で、テクニカル的には、上昇基調の強さを表した。四半期ベース(2024年1~3月期)では、166.60ドル、8.0%の上昇となり、2四半期連続の上昇となった。

大きく上値追いとなった先週のNY金のレンジは2,164.40~2,256.90ドルと90ドルを超えるものとなった。想定レンジを2,155~2,190ドルとしたのは、月末、四半期末を考慮してファンドの利益確定及びポジション(持ち高)調整の売りを想定したものだった。実際にNYコメックスの日々の出来高と取組(未決済玉)の推移を見ると、売りは出ているものの、それを吸収する新規資金の流入があり、上値を大きく伸ばすことになった。モメンタム相場は過熱したまま継続している。

一方、NY金の上昇加速をそのまま映す形で国内金価格の最高値更新も続いた。こちらも想定レンジ1万350~1万650円に対し、1万504~1万976円と大きく上振れとなったのは、NY金の動きによる。さらに先週の米ドル円相場が3月27日の東京時間に一時151.97円と、約34年ぶりの円安水準まで進んだことがある。その後は財務省・日銀による介入警戒から上昇一服となったものの、151円近辺の水準が続き、国内金価格はNY金の上昇に連動した。国内金価格の前週末終値は1万959円、週足は367円、3.46%高で6週連続上昇となった。

FRB利下げ転換が基本シナリオ ニューヨーク金先物価格空前のモメンタム相場

史上最高値の更新を続けた先週のNY金の上昇だが、何らかの強力な手掛かり材料が出たわけではない。むしろ売りを誘うような材料が出ていた。というのも、3月27日にニューヨークで行われた講演で、ウォラー連邦準備制度理事会(FRB)理事は、「最近のデータを受けて、私の見解では利下げの全体的な回数を減らすか、さらに先送りするのが適切だ」と発言していた。そもそも講演のタイトル自体が「まだ急ぐことはない」というもので、利下げに向け慎重なスタンスを強調するものだった。主な市場取引終了後の発言ゆえに、3月28日の株式市場の反応が注目された。27日に過去最高値を更新して終えていたS&P500種株価指数は、翌28日も連日で高値を更新。のみならずダウ30種平均株価も同日は最高値を更新して終了した。

つまり、株式市場、金市場ともにウォラー発言を無視したような展開と言えた。このところ史上最高値の更新を続ける米株式市場だが、背景には、時期はともかく、FRBの次の政策方向は利下げ、ということを基本シナリオに据えていることがある。NY金上昇の背景も基本的に同じで、こちらは米利下げ期待のみならず、前週のスイス国立銀行(中央銀行)の想定外の利下げをはじめ、欧米の中央銀行全般が今後利下げを視野に入れていることも買い要因となっている。さらに中東情勢のみならず、ロシアでの大規模テロのウクライナ情勢への影響など、地政学的緊張の高まりも上昇の背景として指摘できる。

NY金に関しては、3月に入り加速した短期投機筋(CTA=商品投資顧問)によるモメンタム相場が、テクニカル面での強気相場入りにつながったこともある。先週の上昇は、結果的に過去4年間の調整局面のレンジ上抜けになったことで、終盤にさらに買いが膨らんだものと思われる。「先週の動き」でも書いたが、モメンタム相場は過熱したまま空前の規模で継続している。

今週の見通し:想定レンジはニューヨーク金先物価格2,250~2,330ドル、国内金価格1万900~1万300円とするものの欧米資金大量流入で上振れを含む波乱相場に要注意

本日から4月に入る。毎月初めは言うまでもなくイベント週となる。4月1日は3月ISM製造業景況指数、2日は雇用動態調査で求人件数、3日は3月ISM非製造業景況指数、さらに5日は3月米雇用統計と重要指標の発表が続く。3月初めからのNY金急騰は、2月のISM製造業景況指数の予想外の下振れを契機に始まった経緯がある。なかでも3月の雇用統計に注目したい。失業率は3.8%と、2月に記録した3.9%の2年ぶりの高水準をやや下回ると予想されている。

合わせて今週は3日のパウエルFRB議長を筆頭に、連日多くのFRB高官の発言機会が予定されている。パウエル議長の他、NY地区連銀のウィリアムズ総裁や、サンフランシスコ地区連銀のデーリー総裁の発言に注目したい。

今週の想定レンジだが、本コラムを執筆中の4月1日午前のNY時間外のアジア時間からNY金騰勢に拍車がかかっている。1日午後1時10分の時点までで、NY金は一時2,286.40ドルと2,300ドルを視野に入れるところまで水準を切り上げている。国内金価格もそれにつれて上昇し、一時1万1030円と、1万1000円台乗せに至っている。2023年末の当コラムで、2024年のNY金の高値予想を2,300ドル、さらに状況次第で2,500ドルも想定としたが、早くも2,300ドル突破が近づいている。

NY金の想定レンジは、2,250~2,330ドル、国内金価格は1万900~1万1300円を想定する。NY金に関しては、相場格言が教えるところの「もうはまだなり」という展開だが、これまで本格参戦していなかった欧米勢の資金流入が急拡大という点で、上振れを含む波乱相場に要注意といえる。

【図表】金 縦軸:円建て金/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券