物価等経済指標・春闘の結果を受け、マイナス金利政策の解除を決定

日本銀行は本日の政策委員会・金融政策決定会合でマイナス金利政策の解除を決定しました。金融市場調節方針はマイナス0.1%だった政策金利残高への付利金利が撤廃され、かつての指標であった無担保コール翌日物金利0~0.1%程度を誘導目標とする政策を再導入しました。またイールドカーブコントロール(YCC)の撤廃やETF・J-REIT等長期国債以外の資産新規買い入れ終了を決定しました。なお長期国債の買い入れについてはこれまでとおおむね同程度の金額(6兆円程度)継続で長期金利の過度な変動は抑制する方針です。

足元の物価等経済指標や春季労使交渉の第1回集計結果を受け、声明文では「2%の物価安定の目標が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったと判断」しています。一方で「当面、緩和的な金融環境が継続すると考えて」おります。異次元緩和とも呼ばれた非伝統的な政策が「役目を果たした」と判断される環境にあるものの、緩和からの正常化にはまだ時間を要する認識です。

対話重視で、金利市場の動きは限定的

日銀は以前のサプライズ路線から対話重視に舵を切っており、今回の決定会合も事前の報道通りとなるなど、金融市場に対して地ならしが進められていました。大規模な政策変更に見えるものの、すでに形骸化していた部分も多く市場へのサプライズや大きな影響は無い結果と言え、金利市場の動きも限定的となりましたが、為替市場では円安が進み株式市場も日経平均で4万円を回復しました。

先週からマイナス金利解除の報道は見られ始めたものの、当初から円高圧力は限定的でした。米国経済指標による米金利の変動の方が為替に影響しており、日本からの材料に反応が乏しかったのは、マイナス金利解除後の更なる動きはコンセンサスとしてほぼ期待されていないためでしょう。

当面は緩和的な金融環境を継続、次の動きは夏場以降か

その点で今後の政策運営スタンスが垣間見られるか注目された記者会見ですが、大規模異次元緩和は終了したものの、短期金利を政策手段とする普通の金融緩和への回帰であり、また現時点の経済・物価見通し前提であれば当面緩和的な金融環境を継続させる旨が繰り返されました。日銀が一段と正常化に踏み込むにはデータの確認に時間が必要な印象です。

4月には日銀短観で景況感や企業の価格転嫁意欲が示されますし、決定会合では3ヶ月に一度出される展望レポートが示されます。総裁は会見でも物価見通しが上振れもしくは上振れリスクが高まる場合は政策変更、と示唆していることからも内容が注目されますが、「当面」とは市場では通常3ヶ月~半年程度が期待されるなか、慎重な総裁のスタンスも相まって次の動きは夏場以降となるでしょうか。円金利の動きが限定的となる中、為替変動は米国側からの要因に引き続き注目となります。