先月仕事で中国は深センとベトナムのホーチミンを訪れました。コロナ等もあり、中国を訪れたのは8年ぶりくらいだと思います。中国がフィンテック先進国となっているというのは記憶にあったのですが、今回改めて徹底的にお金のやり取りがデジタル化した社会であることをリマインドさせられました。

深センの空港から市内のホテルへは一般のタクシーを利用したのですが、料金の支払いは現金、または中国国内専用のアプリでしか払えません。日本のようにVISAやJCBなど普通のクレジットカードは使えないのです。よって外国人である私の支払いのすべは現金だけとなリますが日本円で百円程度のお釣りをもらう際、タクシーの運転手は現金を持っていませんでした。

このような経験はたまたまのことだろうと思っていたのですが、深センのホテルにチェックインした際、ホテルのボーイさんにチップを払うため100元(2,000円程度)の両替をお願いしたところ、ホテル受付のレジに現金がなく10分も待たされたのです。大手のホテルです。その夜、地元のレストランで夕食を取ると、同じく支払いには海外のクレジットカードが使えず、他のお客さんがスマホアプリでいとも簡単にスマホで支払う中、私が現金で払うとお店にはお釣りがなく、店員の方が小額紙幣を探しに走りレジで5分も待たされました。

中国は文字通り現金を使わないキャッシュレス、お金のデジタル社会となっていたのです。日本でもデジタル化されてはいるものの、未だ一般的に現金が多く使われている社会です。翌日現地でお会いした現地企業のトップの方に先日の経験談をすると、特に驚かれた様子はなく、自分はもう半年以上現金を見たことがないと言われました。チップを払いたいと思う状況があれば、現金でなくスマホアプリで相手に行うのだとか。

その方の話では、深センでは強盗犯罪が無くなったと教えてくれました。もはや誰も家に現金を持っていないので泥棒がいなくなったと言うことなのです。笑い話の様ですが、なるほどと思った次第です。『ただ、中国版オレオレ詐欺はあるけどね』と付け加えていました。

スマホアプリの利便性は他のアジアの都市でも実感することになります。15年以上前のホーチミンでは英語の通じにくい一般タクシーでの移動がどれほど困難であったかは覚えていたのですが、今ではグラブと言うシンガポール企業が開発したアプリを使ったシステムがその問題を解決していました。グラブとは、今まさに日本で議論されているライドシェアのシステムです。

ベトナムに入国する前にこのアプリを私のiPhoneにダウンロードし、クレジットカード情報を入力するとものの5分で登録完了です。後は車が必要な時に、自分の現在の居場所をアプリの英語表記の地図上で確認し登録、行き先を英文で入力するだけ、基本的な英語力さえあれば、外国人であっても簡単に車の手配が可能なのです。

やってくるのは自家用車にスマホアプリを登録した一般のドライバーですが、アプリにはおよそ何分後に到着するか、そのナンバープレートや運転手の名前などの情報が表示されており、私の経験では大抵5分以内に車が到着、その日のミーティングに遅れることもなく道の混雑するホーチミンを無事移動できました。

ホーチミン滞在中、8回はグラブを使いミーティングの移動に使ったと思いますが、ベトナム語しかできない運転手と話す必要性もなく、非常にスムーズ、且つストレスのない移動を可能としてくれました。これを本業としているドライバーもいるのでしょうが、時間のある時に副業的な感覚で誰でも簡単に収入を得ることができるのです。これは日本では完全に自由化されていない米国ウーバーの東南アジア版です。

東京では最近インバウンドの旅行者が増えたこともあり、タクシーが捕まりにくくなっていることに気づく読者の皆さんも少なくないのではないかと思います。先週東京でウーバーアプリを使いタクシーを呼んだところ、改めてウーバーのユーザーフレンドリーなシステムに感動しました。

この時乗車したウーバーと提携しているタクシー会社の運転手さんによると、彼はウーバーのアプリがいかに優秀であるかを力説、日本でライドシェアが自由化された場合、今の給料より稼げそうであり、タクシー会社を辞めウーバーの運転手に専念することが決して悪くない選択かもしれないと語っていました。

最後に「やはりアメリカの会社はすごいですね」と言われる運転手さんの一言を聞き、それって私がセミナーで米国株の投資家の皆さんに話していることではないかと思わず笑ってしまいました。日本でライドシェアを進めるにあたり、安全の問題を指摘する意見もありますが、運転手さんの意見では保険が解決するだろうとのこと。

ライドシェアも解決しなければならない問題はあるのでしょうが、世界的にライドシェアが認可され人々の暮らしに貢献している国が多い中、反対意見に押され物事が進まない日本。特定の関係者の利益が守られるのではなく、多くの国民の利便性や、収入を増やす機会を与えてくれるライドシェアのメリットについて、今回アジアの新興国を訪れて改めて考えさせられました。