中国株にとって厳しい1年だった2023年
2023年も残り1ヶ月になりました。2023年最後の中国株のコラムとして、2023年の中国株の振り返りと2024年の展望について解説したいと思います。
2023年は中国株にとっては厳しい1年となりました。米中対立という国際的な構図があった上に、燻り続けている不動産問題が更に表面化してきた1年でした。2022年末の株価に対して2023年12月4日の終値は、上海総合指数は-2.1%、香港ハンセン指数は-15.9%となっています。
中国本土株は政府系の投資会社などの「国家隊」の買い支えや、元々、海外の資金流入が制限されてきており、米中対立をベースにした海外資金の流出が少なかったこと、2023年1番影響を受けた民営系の不動産会社やハイテク企業の構成ウェートが低かったことなどが理由で下げ幅は小幅でした。しかし、その一方で香港ハンセン指数はかなり大きな下落となっています。
香港市場で大きく下がった銘柄を見ると、やはり不動産株、そして銀行株や保険株があります。銀行株や保険株がなぜ下がっているのかと言えば、不動産への資金への貸し手として売られているのです。
不動産不況が金融大手の懸念に拡がる構図は、2000年代の米国のサブプライムローン問題に酷似しています。サブプライムローンはプライム層以外の支払い能力のない個人(サブプライム層)に対し、過剰な不動産融資を行い、その大量の資金が不動産市場に流れ込んで不動産市場がバブル化したものでした。
この時の論点ですが、銀行はいくら貸しても自分自身に悪影響がないので、どんどん融資していたことがあります。そのサブプライム層への債権は、銀行が最後まで保有するのではなく、金融商品として組成され投資家に販売されていたのです。
確かにサブプライム層への融資なので1人分の債権なら大きなリスクがあるわけですが、生命保険と同じ理屈で、1万人分の債権をセット商品化すれば、確かに数名は本当に支払えないかもしれないかもしれませんが、全体に対する割合は小さく、一方で元々の金利が高いために商品としての魅力は高いという構図です。
しかも、これにオプションや仕組み債など様々な投資商品を繋ぎ合わせて、一見安全に見える複雑な商品を作り出し、さらに格付け会社が高い格付けをつけたので、世界中の投資家が投資をしたわけです(しかし、実際は販売している金融機関自身も内容を完全には把握できない中で投資されているような状態でした)。その後、サブプライムバブルが弾けたのは記憶に新しいところだと思います。
サブプライム問題同様に根深い中国の不動産問題。2024年も引き続き株式市場の重しに
この支払い能力のない個人に対する不動産融資を、中国の支払い能力のない企業への不動産融資に置き換えれば、現在の中国の不動産問題がどの程度根深いのか見えてきます。おそらくこれはすぐには解決されず、2024年も引き続き株式市場の重しとなるでしょう。
千数百兆円(2027年に2000兆円の推測も)にもなる地方政府傘下のフィナンシャル・ビークル「融資平台」の発行する債券の買い手は、銀行理財商品、信託商品、そして保険会社などとなっています。
融資平台には「暗黙の政府保証」があり、しかもそれは比較的高い利回りで資金が集められてきた、安全高利回りの金融商品と思われてきたもので、道路や橋、公共住宅などインフラ投資を行うとされています(しかし、実際には様々な形で不動産にも相当投資されているはずです)。安心で高利回りだから資金がとんでもなく流れ込んでいるという状況はサブプライム問題とそっくりで、この問題は相当に根深く簡単には解決しないでしょう。
実際のところ、2023年11月23日には中国政府が不動産会社に前例のない支援策検討、無担保融資許可もという報道があって、一時的に不動産株は大きく上昇したのですが、その後はすぐに下落してしまいました。
これは、そう簡単にこの問題は解決されない(できない)と市場が考えていることを意味しています。つまり、2024年も不動産・銀行・保険会社など不動産問題が影響するセクターは軟調に推移する可能性が高いということです。
ただ、その一方で財務内容が優秀で業績拡大が続いている企業があるのも事実です。2024年株価がさらに下がった時に、そのような優良株の株価も一緒に下がってくれれば長期目線ではチャンスであるという見方に変更はありません。