モトリーフール米国本社、2023年11月28日 投稿記事より

バークシャー・ハサウェイの副会長であり、ウォーレン・バフェット氏の右腕だったチャーリー・マンガー氏は、長年にわたる遺産と多くの名言を残した

バークシャー・ハサウェイ[BRK.B]の副会長であり、投資界の重鎮であったチャーリー・マンガー氏が99歳で亡くなりました。バークシャー・ハサウェイは11月28日、伝説的投資家であるマンガー氏がカリフォルニア州の病院で静かに息を引き取ったことを、同氏の家族から伝えられたことを明らかにしました。

マンガー氏は、バークシャー・ハサウェイでウォーレン・バフェット氏の右腕だっただけでなく、同氏自身も何十年にもわたって素晴らしい成功実績を持つベテラン投資家です。同氏は、バフェット氏の投資スタイルに助言をしてサポートし、1964年~2022年末の間にバークシャー・ハサウェイの株主にもたらした378万7,464%(誤字ではありません)のリターンに大きな役割を果たしてきました。

マンガー氏の投資キャリア

マンガー氏は、元は弁護士でした。学部では数学を専攻し、一時は軍隊に入隊しましたが、その後にハーバード・ロー・スクールに入学しました。卒業後に法律事務所を共同で設立し、不動産を専門とする弁護士として働きましたが、その後、資産運用に集中するために弁護士を辞めました。

マンガー氏は、バークシャー・ハサウェイの副会長として最もよく知られていますが、同氏の投資家としてのキャリアで素晴らしいのはそれだけではありません。同氏がバークシャー・ハサウェイの副会長に就任したのは1978年で、既に50代半ばでした。

1962年~1975年にかけて、同氏は投資組合のウィーラー・マンガー・アンド・カンパニーを運営していました(同組合はその後解散されています)。投資組合の運用結果は目覚ましく、同期間のダウ工業株30種平均の年平均上昇率がわずか5%だったのに対し、投資組合は年率19.8%(手数料控除前)のリターンを生み出しました。興味深いことに、これはバフェット氏がバークシャー・ハサウェイで生み出した長期複利リターンとほぼ同水準です。

マンガー氏とバフェット氏の出会い

マンガー氏は1959年に、共通の友人からバフェット氏を紹介されました。実は、マンガー氏は10代の頃、バフェット氏の祖父が経営する食料品店で働いていた経験があります。長年にわたり、バフェット氏の投資スタイルに最も大きな影響を与えたのは、バフェット氏の師であるベンジャミン・グレアム氏を除けば、おそらくマンガー氏でしょう。

例えば、バフェット氏が投資の矛先を、問題を抱えた企業(バフェット氏はこうした企業を「たばこの吸い殻」銘柄と呼んでいました)から、長期的に保有するための優良企業へと変えたのは、マンガー氏の影響によるものでした。「並の企業を安く買うよりも、素晴らしい企業を適正な価格で買う方が優れている」という名言は、バフェット氏のものとされることがありますが、実際にこれを言ったのはマンガー氏です。実のところ、バフェット氏は当初、経営難に陥った繊維メーカーであったバークシャー・ハサウェイの株式を大幅な安値で購入しましたが、のちにこれを最悪の投資の1つと呼び、マンガー氏だったら絶対に買わなかっただろうと言っていました。

マンガー氏はまた、分散投資についてのバフェット氏の考え方にも大きな影響を及ぼしました。マンガー氏の投資組合が競合する他の組合と大きく違っていたことの1つは、マンガー氏が一度に保有する銘柄を一握りの数社に絞ることを厭わなかったことです。バフェット氏がバークシャー・ハサウェイの株式ポートフォリオの半分近くをアップル[AAPL]に投資することに抵抗を感じないのはこのためです。マンガー氏は、市場を上回るリターンを達成する最善の方法は、集中したポートフォリオを保有することだと考えており、同氏の実績を見れば反論はできません。

バフェット氏は28日の発表で、「チャーリーのひらめき、知恵、参加がなければ、バークシャー・ハサウェイは現在の地位を築くことはできなかった」と述べました。

投資に関するマンガー氏の名言

バフェット氏はおそらく市場で最も発言を引用されている投資家ですが(もちろん、それなりの理由があります)、投資に関するマンガー氏の言葉も、バークシャー・ハサウェイの株主総会で何度も注目されています。

以下では、マンガー氏の名言をいくつか紹介します。

「豊富な現金を持っていて何もせずにいるには、才能が必要である。平凡なチャンスを追いかけていたら、今の地位は得られなかった」

近年、バークシャー・ハサウェイの保有現金が1,500億ドル超に膨れ上がっていることで、さまざまな憶測を招いています。しかし、現金がこれほど巨額に膨れ上がったのは、マンガー氏とバフェット氏が、絶好のチャンスが訪れるまでいつまでも待ち続けるというスタンスを取っているためです。多くの投資家は、機会を待っている間に多額の現金を遊ばせておくことを好みませんが、マンガー氏はこれを、他の投資家に対する大きな優位性であると考えていました。

「優秀である必要はなく、長い長い間、他の人よりも平均して少しだけ賢ければよい」

マンガー氏は、ホームランを狙ってフルスイングすることはありませんでした。大当たりを狙って割安過ぎる銘柄を買ったり、急成長企業を買ったりしませんでした。同氏は平均以上の打者であり、それを一貫して維持することに満足していました。投資組合時代でも、バークシャー・ハサウェイ時代でも、マンガー氏の年平均リターンは20%前後を維持していました。これは市場を上回るリターンですが、投資が2倍とか3倍になるほどではありません。

マンガー氏が言いたいのは、高めのパフォーマンスを維持できれば、それでよいということです。個別銘柄で20%のリターンはホームランには見えないかもしれません。しかし、想像してみてください。1964年にバークシャー・ハサウェイに1,000ドル投資していたら、今ごろは約3,800万ドルになっていたはずです。

「投資には3つのカゴがある。“イエス”と“ノー”と“難しくて分からない”だ」

マンガー氏が分散投資に積極的でなかった一因として、理解できない企業に投資しなかったことがあります。マンガー氏もバフェット氏も、過去60年の間にこれが理由で、多くの高パフォーマンス企業への投資を逃してきましたが、同時に多くの損失を回避してきたことも間違いありません。

優れた投資は、売りや買いにあるのではなく、待つことにある」

投資家が学ぶべき最も重要な教訓の1つとして、優れた投資の99%は何もしないことです。マンガー氏が目指したのは、優れた企業に資金を投入し、その企業が優れている限りそのままにしておくことでした。それによって、他のポートフォリオ企業を変更しないとしてもです。

「賢い人ほど、株式市場で損をする場合がある」

いつの時代も、賢い人は株式市場で損をします。最大の理由は、自分の感情をうまくコントロールできないからです。投資の主な目標は安く買って高く売ることだというのは常識ですが、実際には非常に多くの人が正反対のことをしています。多くの人は、株価が持続不可能なレベルまで上昇し、市場の注目がピークに達した頃に資金を投入します。そして株価が下落すると、パニックに陥って売却するのです。

「われわれは、1日のうちなるべく多くの時間を、ただ座って考える時間に充てたいと思っている。これは米国の実業界では珍しいことだ。われわれは常に本を読み、考えている」

意外に思われるかもしれませんが、マンガー氏とバフェット氏は仕事中の大半の時間を、会議や、株価のチェックや、財務諸表の分析などの、他の運用マネジャーが多くの時間を割くことがらではなく、オフィスでの読書に費やしていました。マンガー氏は、知識を蓄積することは、投資や人生全般において競争優位性を得る上で最善の方法だと考えていました。

「ハーバード・ロー・スクール時代には1日に100万株を取引することなどめったになかったが、今では数十億株を取引している。そんなに流動性の高い株式市場は必要ない」

暗号資産だけでなく、マンガー氏は頻繁な取引、特にロビンフッドなどのアプリベースのプラットフォームで、投資家が手数料なしで絶えず取引を行えるデイトレードのブームについても批判的でした。これは人々が本能的に持つギャンブル欲を煽り立てるものであり、投資のあるべき姿(長期的なバイアンドホールド)に反していると考えていました。

マンガー氏よ、安らかに

偉大な4人の大統領の顔が彫られているラシュモア山の投資家バージョンがあるとしたら、バフェット氏と、ピーター・リンチ氏は間違いなく入るでしょう。バフェット氏は、現代のインデックスファンド投資の父とされるジャック・ボーグル氏の彫像を立てるべきだと発言しています。そして、もう1人は、マンガー氏がふさわしいかもしれません。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Matthew Frankel, CFPは、バークシャー・ハサウェイの株式を保有しています。モトリーフール米国本社はアップル、バークシャー・ハサウェイの株式およびビットコインを保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。