◆昨日取り上げたユーミンの『恋人がサンタクロース』は、お姉さんが「サンタがやって来る」というところがミソであった。いい大人が口にするから面白いのである。それを大々的にやっているのが、北アメリカ航空宇宙防衛司令部、通称NORADのサンタ追跡プロジェクトだ。60年ほど前のアメリカで、あるスーパーマーケットが子供向けに「サンタクロース・ホットライン」を開設した。ところがチラシに間違った電話番号を載せてしまったのだ。その番号は司令長官の直通番号だった。長官が電話をとると子供の声で「サンタさんは今、どこを飛んでいますか?」長官は落ち着き払ってこう答えた。「レーダーで調べたところ、サンタが北極から南に向かった形跡がある」

◆それ以来、サンタ追跡プロジェクトはNORADの恒例行事となった。イブになると、サンタクロースを追跡し、その模様を公式ウェブサイトで中継している。サンタの追跡というより護衛である。なにしろ北米警戒システムNORADレーダー、35,888kmの静止軌道上の熱感知衛星、カナダのCF-18戦闘機、アメリカのF-15・F-16・F-22戦闘機が動員されるのだから。 こういうことにかけてはアメリカ人のユーモア精神に脱帽である。

◆ユーモアと資産運用は一見、関係がなさそうにみえる。しかし、そうではない。それを証明しているのがノルゲス・バンクだ。ノルウェーの中央銀行である同行はノルウェー政府年金基金というソブリン・ウェルス・ファンドの運用をおこなっているが、世界屈指のパフォーマンスを誇っている。そのノルゲス・バンクの「ミッション&バリュー」には、こう謳われている。「私たちは熱意と同等にユーモアのセンスを重視する」。ユーモアを重視する組織の風土が高いパフォーマンスの一助になっていることは間違いない。わが日本の公的年金、GPIFも見習ったらどうだろう。

◆マネックスでは、その年の優れた成果を達成した個人またはチームを表彰する「イデイ・アワード」という制度がある。今年の「イデイ・アワード」の大賞はM君が受賞した。授賞理由は「エイプリルフール・プロジェクトで多大なる成果を挙げたため」である。マネックス以外、おカタイ日本の組織でユーモア重視の風潮は浸透するだろうか。数年前、こんなニュースが流れた。驚くなかれ、発信したのはNHKである。

<24日はクリスマス・イブです。世界中の子どもたちにプレゼントを届けようと、ことしもサンタクロースが北欧のフィンランドを出発しました。サンタクロースは、故郷のラップランドで、小さな妖精たちに手伝ってもらいながら、大きな袋いっぱいにプレゼントを詰め込みました。このあとサンタクロースは、トナカイたちに引かれたそりに乗って、雪深い森の中を進んで行きました。地元のテレビ局は「ことしは暖冬のためフィンランド南部では雪が積もっておらず、そりでの移動は難しいのではないか」と心配していますが、そりはこのあと空を飛ぶことになっているので、サンタクロースのスケジュールに影響は出ないものとみられます。世界中の子どもたちがクリスマスの朝を迎えるまで、サンタクロースは大忙しで家から家へと飛び回ります。>

NHKのアナウンサーが真顔で、「そりはこのあと空を飛ぶことになっているので、サンタクロースのスケジュールに影響は出ない」とニュースを読んだのだ。希望がないわけではない。

マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆