今週の日本株相場は、大幅に下落したところから反発のきっかけを探る展開になるだろう。そのカギは米国金利だ。

雇用統計総括

先週金曜日、米国の雇用統計を受けて米国株相場は大きく上昇したが、極めてリーズナブルな反応だったと思う。9月の雇用統計は、非農業部門雇用者数(NFP)が前月比33万6,000人増と市場予想の17万人増を大幅に上回った。一方、3.7%への低下が見込まれていた失業率は3.8%で、前月から横ばい。平均時給は前月比0.2%増と市場予想を下回り、前年比では4.2%増と、8月の4.3%増から鈍化し、2021年6月以降で最小の伸びとなった。

この雇用統計を総括すれば、失業率が下がらないことは引き続き求職者が増えていることの証であり、雇用者数が伸びているのは素直に労働供給の増加である。結果として労働市場のひっ迫感が和らぎ、賃金上昇が鈍っている。FRBは雇用を減らすのは本望ではなく、インフレが落ち着いてくれればそれでいい。今の労働市場は雇用が伸びる中で、極端な人手不足が解消に向かい賃金インフレが落ち着くという、まさに理想的な状況だ。だから長期金利は、雇用統計発表直後こそNFPの上振れに反応して上昇したものの、その後は伸び悩み、それを受けた米国株は大きく上昇したのである。

雇用者数が伸びても失業率が上昇し賃金の伸びが鈍化すれば追加利上げはないだろう。そうした見方を今週の米国の物価指標で追認することになるかが焦点のひとつ。米国では11日に9月の卸売物価指数(PPI)、12日には9月消費者物価指数(CPI)が発表される。PPIはコアが前月比+0.2%と横ばい、総合は前月比+0.3%と8月の+0.7%から大きく鈍化する見込み。CPIも同様だ。コアが前月比+0.3%と横ばいの予想だが、総合は鈍化し、かつ前年同月比では+4.1%と8月の+4.3%から一段と低下する見込みだ。

今週から本格化する決算発表に注目

マクロのインフレ指標に加え、今週から決算発表が本格化する。米国ではシティグループ[C]、JPモルガン・チェース[JPM]、ウェルズファーゴ[WFC](13日)などの金融株の決算に注目が集まる。日本は小売企業を中心に6-8月期の決算発表が佳境を迎える。10日にはJフロントリテイリング(3086)、11日にはABCマート(2670)、ビックカメラ(3048)、吉野家(9861)、12日にはセブン&アイ(3382)、ファーストリテイリング(9983)、13日にはローソン(2651)、良品計画(7453)、高島屋(8233)などが予定されている。小売りの中でもJフロントリテイリング、高島屋はインバウンド関連銘柄でもあり、好業績が期待される。日米以外ではサムスン電子の決算が10日にあり、こちらも注目される。

2月決算の安川電機(6506)は製造業の先陣を切って先週末に決算を発表した。実績はまあまあだったが、受注が冴えない。中国景気に対して慎重な見通しを示したことから株価反応はネガティブなものになるだろう。それは織り込み済みとして、安川1社で済むか他の銘柄にも波及するかがポイントである。

地政学リスクが不透明要因

不透明要因はパレスチナ自治区ガザを実効支配するハマスとイスラエル軍の戦闘が激しさを増していることだ。欧米株式市場にどのように影響するか本稿執筆時点ではまだ分からないが、これを悪材料視して欧米株が下落すると、先週末の米国株の大幅上昇も帳消しとなって連休明けの日本株相場が始まる。そのまま様子見姿勢の強い1週間となるかもしれない。

予想レンジは3万500円~3万1800円とする。