◆昨日の東京外国為替市場で円相場は一時1ドル115円50銭を超えるところまで下落し、2007年11月以来およそ7年ぶりの円安・ドル高水準を付けた。10月末の日銀による追加緩和、いわゆる「ハロウィーン・サプライズ」以降、急ピッチで円安が加速している。一昨日に行われた米国中間選挙で共和党が勝利し、米国株高となったこともドルを買って円を売る動きに拍車をかけたようだ。

◆しかし円安進行のスピードが速すぎることへの警戒感や115円50銭という節目をつけた達成感などから、昼過ぎには円高方向への急激な巻き戻しが起きた。株価も為替に連れて下落した。東京株式市場では利益確定売りが広がり、日経平均は6日ぶりに反落した。取引時間中には1万7000円台に乗せるものの、終値でその大台をクリアできていない。

◆と、ここまでお読みになられて、これは「新潮流」のコラムか?と思われた方もおられるだろう。小欄は今日で110回を数えるが、相場の話から書き始めたことはない。大抵は、時候の話題などから入って、金融、経済、時事、社会ネタにつなげるのが定石であった。今日はいつもと順番が逆である。というのも、1年を通じて今日が日経平均の上昇確率が最も低い日 - つまり最も下落しやすい日だからである。

◆60年を超える日経平均算出の歴史で、今日11月7日の騰落は15勝38敗、勝率28%とダントツのワースト記録。特に近年は2007年から2度の休場を挟んで5連敗(5年連続下落)中である。昨日の相場が嫌な引け味となるなか、今日を迎えることになったので、ついつい相場の話から書き始めてしまったのだ。

◆そう、いつもと順番が逆だ。普通なら、こう始める。<今日は立冬。暦の上ではもう冬である。そろそろ冬支度を始めよう>と。一昨日の小欄「口切り」で書いた通り、冬に向かうこれからは株の季節。相場の世界における「冬支度」はしっかりと株を仕込むことだ。であれば、日経平均が最も下げやすい今日は「冬支度」をするにはもってこい。絶好のお日柄となるかもしれない?

ことごとく 母にたずねて 冬支度 (幸代)

マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆