◆人気グループTOKIOの城島茂、山口達也が、東京湾に浮かぶ人工要塞の無人島「第2海堡」に民間人で初めて上陸した。日本テレビ「ザ!鉄腕!DASH!」で、TOKIOが取り組んでいる東京湾の再生企画「DASH海岸」の番外編。実はこの企画は、自然環境の再生に取り組み啓蒙普及に貢献したとして、国土交通省から「海の日表彰」を受けている。今回の「第2海堡」上陸もそうした実績を考慮して特別に許可が下りたのだという。

◆長年にわたって「東京湾再生プロジェクト」という取り組みが推進されている。官民連携フォーラムも設立され、TOKIOのようなアイドルグループもテレビ番組の企画で関わるなど活動の裾野が広がっている。そのせいあってか最近の東京の海は以前よりもきれいになったように思う。海釣り施設があちこちに整備され天気の良い日には親子連れなどで賑わっている。そうした海釣り施設の周辺にはバーベキューができる海浜公園もあり、「東京湾」にひとが集まりつつあるようだ。

◆安倍政権が成長戦略の目玉と位置づける東京圏の国家戦略特区事業の素案を昨日の日経新聞は1面トップで報じた。バブル期には東京に多くの外資系金融機関が拠点を構えたが、その後は撤退に次ぐ撤退。現在も外資系金融機関の流出が止まらない。このため今回の特区事業では、外資系企業を誘致しやすい環境をつくり、国際ビジネス拠点として東京を再生させる狙いだという。

◆東京を国際ビジネス拠点に、国際金融センターに - その心意気や大いによし、である。しかし、その外資系企業の誘致を目指す、と謳って並んでいるメニューを見てみよう。金融機関向けの超高層ビル建設、インターナショナルスクールや外国人向け医療施設を併設した職住近接型の街づくり、国際会議や国際展示会に対応するための多目的ホールや高級ホテルなどを併設した国際交流施設、商業施設や訪日外国人向け居住施設、などなど。よくもまあ、ここまで「箱もの」を並べたものである。まるで土建屋と不動産屋の発想から抜け出せていない。

◆なぜ東京湾にひとが集まるようになったのか。海がきれいになったからである。魚が戻って釣りが楽しめるようになったからである。いくらバーベキューができるきれいな公園があっても、海釣り施設が整備されていても、肝心の「魚」が釣れないのでは外資系金融機関はやってこない。ましてや彼らは、レジャーを楽しむ釣り人ではなく、プロの漁師である。本当に彼らを東京に呼ぶためには、東京の資本市場という「海」を、活きのいい魚がたくさん捕れる魅力的な「漁場」に変えることが必要である。それこそが、「東京圏の戦略特区構想」の中核に据えられるべき課題であろう。

マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆