今週(8月25日~8月31日)の相場動向

相場回顧 BTC:ビットコイン現物ETFへの期待で一喜一憂

ビットコインはBTC=378万円(26,000ドル)付近でもみ合う展開となった。ジャクソンホール会議でのパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長講演に注目が集まったが、市場予想通りの無難な内容となった。イベント通過後に株式市場では買いが強まったが、米証券取引委員会(SEC)がバイナンス訴訟に関する機密文書を提出したとの報道があり、規制リスクへの警戒感から上値が重くなった。

しかし、8月29日にグレースケールがビットコイン投資信託[GBTC]のETF転換を巡る米SECとの訴訟で勝訴したことが伝わると、米国におけるビットコイン現物ETFの実現への期待が高まりBTC=407万円(28,000ドル)付近まで急騰した。その後、今回の判決を受けて現物ETFが必ずしも承認されるわけではないとの冷静な見方もあり、利益確定売りが優勢となった。

8月30日に発表された7月米ADP雇用統計が市場予想を下回る結果となったことを受け、利上げ停止への期待で株式市場が上昇する中、BTC=393万円(27,000ドル)付近で下げ渋った。しかし8月31日に米SECが全てのビットコイン現物ETFの審査を10月まで延期すると発表し、その失望売りによって今週の上昇分を打ち消した。

 

来週(9月1日~9月7日)の相場予想

BTCは米雇用統計次第で堅調さを取り戻すか、現物ETFの審査延期は織り込み済

9月1日夜に発表される7月米雇用統計が7月米ADP雇用統計と同様に市場予想を下回る内容となった場合には、利上げ停止への期待によってリスクオン買いが強まることは考えられる。時間あたり賃金の伸び率が鈍化するかにも要注目であり、9月13日の米7月消費者物価指数に向けてインフレ鈍化の傾向が示唆されれば好感されるだろう。その後も次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)までは経済指標を見極める展開が続くことが予想され、それによって高止まりする米国金利が低下に転じれば相場も堅調さを取り戻すことが期待できる。

米国ではビットコイン現物ETFへの期待で揺れている。今ある申請分の審査延期を受けて再び売りが強まっているが、初回の延期については市場予想通りのため価格の下げは限定的と思われる。今回のグレースケールの判決は、米SECが各申請を否決するにしても明確な理由を告げることを要求する内容であった。そのため今後は審査基準がより明確化されるとの期待もあり、中長期的な好材料として捉えられるだろう。米国地方裁で分散型取引所ユニスワップへの集団訴訟が棄却されるなど、最近は米国の訴訟問題で暗号資産に有利な判決が続いており、米SECによる恣意的な取り締まりに待ったがかかっている。

また来週末にインドで開かれるG20首脳会議で暗号資産の国際規制に関する議論が行われるかにも注目である。現議長国であるインドは会議に先立って暗号資産の国際的なフレームワークに関する声明を発表しており、今回は国際通貨基金(IMF)と金融安定理事会(FSB)が共同で作成する統合文書と合わせて議論されることが予想されている。

直近、上値として下落前のレンジ底値付近であるBTC=415万円(28,500ドル)、下値として2023年6月の底値付近であるBTC=364万円(25,000ドル)を意識する。