◆先日、渋谷のパルコ劇場で「ショーガール」の舞台を観た。「ショーガール」といえば、木の実ナナ、細川俊之のコンビで1974年から1988年までシリーズ上演された名ステージである。大人の恋の物語を歌と踊りで綴り、多くの観客を魅了した。パルコ劇場の歴史は「ショーガール」抜きには語れない。今回、四半世紀ぶりに復活した「ショーガール」は脚本家・三谷幸喜、念願の企画である。
◆開演は夜の10時。夏の夜、1時間限りのショーである。今回の出演は川平慈英とシルビア・グラブ。二人の息の合った舞台は圧巻だった。ショーが跳ねたあとも興奮が冷めやらない。遅い時間にもかかわらず、すぐにタクシーを拾う気にならなかった。冷たいビールで喉を潤し、ショーの余韻に浸った。
◆ジャネット・イエレンFRB議長を「ショーガール」と呼んだら失礼だろうか。今回のFOMCとその後のイエレン議長の会見は誰もが固唾を飲んで見守ったマーケット最大の「ショー」。そのショーの主役がイエレン議長そのひとで、彼女は市場の期待に応えて完璧なパフォーマンスをわれわれ「観客」にみせてくれた。敬意をこめて「ショーガール」とお呼びする次第である。
◆イエレン議長は、タカ派、ハト派、その中間と、多彩な顔ぶれのFOMCメンバーを見事に取り仕切り、出口戦略の道筋を市場に示した。「相当な期間、ゼロ金利を保つ」、「利上げは経済次第」といったこれまでの文言を繰り返し、市場に先入観やいたずらな動揺を与えることなく、FOMCメンバーの金利予測を淡々と示すことで、FEDが考える金融正常化のメッセージを上手に市場に伝えた。完璧な「舞台」だった。これを受けたNYダウ平均は史上最高値を再び更新した。
◆パルコ劇場の「ショーガール」はこの前の日曜日が楽日。暑さ寒さも彼岸まで、というが渋谷の街にも秋風が吹き始め、夏の終わりとともに今年の「ショーガール」は幕を閉じた。また来年もやってほしい。できれば再来年も、その次も。ロングランとなることを期待したい。かたや米国の金融政策、QE(量的緩和)の閉幕は来月である。これまで景気回復が覚束なく、一度ならずも二度、三度、QE2、QE3と発動を迫られてきた。ロングランとなったQEに、ようやく幕が下りるのだ。「カーテンコール」はどうぞ、ご遠慮願いたい。
マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆