【米国株式市場】ニューヨーク市場
NYダウ: 35,281.40 △105.25 (8/11)
NASDAQ: 13,644.85 ▼93.14 (8/11)
1.概況
10日の米国市場は7月の米消費者物価指数(CPI)の伸びが市場予想を下回ったことで追加利上げへの警戒感が和らぎ3日ぶりに反発となりました。108ドル高でスタートしたダウ平均は朝方に455ドル高まで上昇しました。しかし、長期金利の上昇を受けてハイテク株に売りが出て上げ幅を縮めました。取引終盤には小幅にマイナスとなる場面もありましたが、下げ渋ると持ち直し結局52ドル高の35,176ドルで取引を終えています。また、S&P500株価指数が1ポイント高の4,468ポイントとなったほか、ハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数も15ポイント高の13,737ポイントとなっています。
先週末の米国市場は高安まちまちとなりました。ダウ平均はディフェンシブ株や石油株を中心に買いが入り続伸となりましたが、S&P500株価指数とナスダック総合株価指数は長期金利の上昇を受けてハイテク株に売りが出て反落となりました。64ドル安でスタートしたダウ平均は直後に116ドル安まで下落しました。しかし、朝方の売り一巡後に持ち直すとまもなくしてプラスに転じ178ドル高まで上昇しました。その後は伸び悩みましたが、取引終了まで堅調に推移すると結局105ドル高の35,281ドルで取引を終えています。一方でS&P500株価指数が4ポイント安の4,464ポイントとなったほか、ナスダック総合株価指数も93ポイント安の13,644ポイントとなっています。
2.経済指標等
10日に発表となった7月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比3.2%上昇と前月から伸びが13ヶ月ぶり加速しましたが市場予想を下回りました。また、変動の大きいエネルギーと食品を除いたコア指数は前年同月比4.7%上昇と伸びが前月から鈍化し市場予想を下回っています。さらに先週一週間の米新規失業保険申請件数は前週比2万1000件増の24万8000件となり市場予想以上に悪化しました。7月の米財政収支は2208億ドルの赤字となっています。
先週末に発表された7月の米卸売物価指数(PPI)は前年同月比0.8%上昇と前月から伸びが加速し市場予想を上回りました。また、8月の米ミシガン大学消費者態度指数速報値は71.2と前月から低下しましたが市場予想を上回っています。
3.業種別動向
10日の業種別S&P500株価指数は全11業種のうちコミュニケーション・サービスや一般消費財・サービス、素材などの6業種が上げました。一方で公益事業や不動産、資本財・サービスなどの5業種が下げています。
先週末の業種別S&P500株価指数は全11業種のうちエネルギーやヘルスケア、公益事業などの7業種が上げ、エネルギーは1%を超える上昇となりました。一方で情報技術やコミュニケーション・サービスなどの4業種が下げています。
4.個別銘柄動向
10日の米国市場では決算で1株利益が市場予想を上回ったウォルト・ディズニー[DIS]が5%近く上げダウ平均構成銘柄で上昇率トップとなりました。また、高級ブランドの「マイケル・コース」や「ヴェルサーチ」などを展開するカプリ・ホールディングス[CPRI]も55%を超える上昇となりました。高級革製品「コーチ」を擁するタペストリー[TPR]がカプリ・ホールディングスを買収すると発表したことで買収価格にさや寄せする格好で急伸しました。さらに中国の電子商取引(EC)大手のアリババ・グループ・ホールディング[BABA]も決算で売上高と1株利益が市場予想を上回ったことで4%以上上げています。一方で衣料のラルフローレン[RL]が5%近く下げました。決算で示した7-9月期の売上高の見通しが市場予想を下回ったことが嫌気されました。
先週末の米国市場ではシェブロン[CVX]が原油価格の上昇を受けて2%余り上げ上昇率トップとなりました。また、子会社が米政府から二酸化炭素回収に関する助成金を獲得したことを受けて米石油・ガス大手のオキシデンタル・ペトロリアム[OXY]が3%以上上げたほか、メディア大手のニューズ・コーポレーション[NWSA]もコスト削減により四半期利益が予想を上回ったことで4%を上回る上昇となっています。一方で半導体関連株が安く、半導体株ではエヌビディア[NVDA]が3%を超える下落となり、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ[AMD]も2%以上下げました。さらに半導体製造装置株ではラムリサーチ[LRCX]が5%安となり、アプライドマテリアルズ[AMAT]4%近く下落しました。KLA[KLAC]も3%以上下げています。
5.為替・金利等
10日の長期金利は低調な30年債入札を受け0.11%高い4.11%となりました。先週末の長期金利は7月の卸売物価指数(PPI)が市場予想を上回ったことで0.04%高い4.15%となりました。ドル円は米長期金利の上昇を受けて円安となり145円近辺で推移しています。
VIEW POINT: 今日の視点
10日と先週末の2日間トータルでダウ平均が158ドルの上昇となる一方で、ナスダック総合株価指数が77ポイントの下落となるなど、米国市場が方向感に乏しい結果となったことから本日の日本市場は小動きでのスタートが予想されます。こうしたなか日経平均が円安などを支えに節目の32,500円を試すような動きをみせるかがポイントとなりそうです。
(マネックス証券 シニア・マーケット・アナリスト 金山 敏之)