米国長期債の格付け引き下げも、今回は影響軽く

S&P500は先週4,478.05で引け、週間では2.27%下落、Nasdaq100は週間で3.02%下落し、15,274.92で終わっています。

2023年に入ってマーケットはしっかりしているものの、8月の米国株は季節的に弱いという長期に渡ってのパターンが継続しています。

先週8月2日(水)に、突然米国の格付け会社フィッチ・レーティングスが米国長期債の信用格付けをこれまでの「AAA」から「AA+」へ引き下げ、これまでポジティブなモメンタムが続いていたマーケットのセンチメントに水をさしました。2011年のスタンダードアンドプアーズ(S&P)による米国長期債の格下げの後、マーケットが下落したことから、投資家は今回もそのような展開になると危惧したようです。ただ、当時の市場と比べると現在の市場の環境はより安定していること、また前回は格下げが起きたのが初めてで市場へのサプライズとなったのに対し、今回は2回目であることを踏まえると、ここからマーケットが大きく下げるというのは考えにくいでしょう。

ウォーレン・バフェット氏も「心配いらない」と投資継続コメント

実際、格下げが発表された後、JPモルガン・チェース[JPM]のジェイミー・ダイモンCEOはこのフィッチによる格下げは最終的に問題ではないと語っています。それは債券の借り入れコストを決定するのは格付会社ではなくマーケットであるため、「実際にはそれほど重要ではない」と発言、そもそも米国とその軍隊が生み出す安定に依存をしている他国が米国より高い評価を受けるのは「ばかばかしいこと」だと付け加えています。また、バークシャー・ハサウェイ[BRK.B]を率いる著名投資家ウォーレン・バフェットも今回の格下げは「心配いらない」とコメント、格下げ後もバークシャー・ハサウェイは米国債投資を継続しています。

S&P500社決算発表済銘柄:前年比5.2%減益も、約8割が事前予想を上回る

第2四半期の決算発表については、これまでのところS&P500採用銘柄のうち84%が発表を終えており、業績は前年同期比で5.2%の減益となっています。発表済み企業のうち79%が業績について事前予想を上回っており、2021年第3四半期以来の大きな数字となっています。これは過去5年間の77%を、過去10年の73%を超えています。また、65%の企業が売り上げについて事前予想を上回っています。

来期第3四半期については、これまで500社のうち79社がガイダンスを発表、そのうち62%(49/79社)がネガティブガイダンスを、38%(30/79社)がポジティブガイダンスを発表しています。過去5年のネガティブガイダンスの平均は59%、過去10年の平均は64%です。

対照的だったアップル[AAPL]とアマゾン[AMZN]の決算発表

事前予想を上回るも、高すぎる期待から株価下落のアップル

先週の決算発表のハイライトは、GAFAM銘柄のアップル[AAPL]とアマゾン[AMZN]でしょう。

アップルの決算発表は売上、EPS共にストリートの予想を上回りました。粗利益率も、利益率の高いサービス部門売上が増えたことを受け事前予想を超えており、決して悪くはない決算発表だと思うのですが、投資家からの同社への期待はもっと高かったようです。特に来期のガイダンスにポジティブサプライズが見当たりませんでした。今回の決算発表後、金曜日のアップルの株価は下落、特に米国時間午後2時くらいから株価が一段と下落し、最終的にこの日の株価は4.8%下がって終わりました。時価総額世界1位のアップル株の下落を受け、午後2時辺りまでプラスで推移していたS&P500もマイナスへ転じました。

アップルの決算発表の中に、ポジティブサプライズが無かった訳ではありません。米国でのローエンドのiPhoneの売上は弱かったものの、価格の高いハイエンド製品は売れており、海外、特に新興国で売上は堅調だったようです。中国でのiPhoneの売上については、前年比で8%増、他社のスマホからiPhoneへスイッチした利用者の数はこれまでで最高だったそうです。

新市場のインド、AI搭載製品への期待など現在は買いの機会

アップルのこれからの成長の機会はインドです。インドにおける現在の売上はおよそ60億ドルですが、10年後には400億ドル程度へ成長できるだろうという見方もあります。これまでアップルにとって中国で起きてきたことが、インドでも起きるだろうということです。

マイクロソフトやアルファベットと比べるとAIについては静かなアップルですが、彼らも世の中のAIのトレンドにキャッチアップしようとしているようで、近い将来のアップル製品のインフラやアプリには、より高性能のAI機能が搭載されそうです。

アップルの決算を見ると、全体の売り上げに対し、利益率の高いサービス部門の売上のシェアが増えており、同社全体の利益率が高まっています。また、潤沢なキャッシュフローを生み出し、積極的な株主還元を行なっています。これからも長期的に安定的な成長が期待されるアップル株の現在の下げは買いの機会と考えています。

市場の憶測では、新機種であるiPhone15の発表は9月12日か13日に行われ、発売は9月23日前後となるようです。

コスト削減と広告増益で発表後に上昇のアマゾンも割安感

一方、アップルと対照的な決算発表を行なったのはアマゾン[AMZN]でした。これまで決算発表後3四半期連続で株価が下落していたアマゾンですが、今回久し振りに決算発表後に株価は上昇、1日で8.3%上げています。今回、同社の配送コストや賃金の下落による粗利益率の拡大が見受けられましたが、Eコマースも成長を続けています。拡大した費用は、貨物や労働などの粗利益だけでなく、Eコマースの持続的な成長も影響しています。Amazon Primeでのショッピングが増え、広告ビジネスの成長にも寄与しており、AWSのクラウドビジネスは12%成長しました。経済が回復してくると12%以上の成長と利益の拡大が見込まれます。今年のEPSは前年比で176%の伸びが予想され、来年、再来年と4割を超える増益が期待されています。また、PEGレシオは1倍を切っており、株価にはまだ割安感があります。

今週の決算発表予定

今週はS&P500社のうち34社(7%)の企業が決算発表を行う予定になっています。

8月7日(月)

タイソン・フーズ クラスA [TSN]、インターナショナル・フレーバー&フレグランス [IFF]、ルーシッド・グループ [LCID]、パランティア・テクノロジーズ A [PLTR]、パラマウント・グローバルB[PARA]

8月8日(火)

イーライリリー・アンド・カンパニー[LLY]、ユナイテッド・パーセル・サービス クラスB [UPS]、アカマイ・テクノロジーズ[AKAM]、リフト[LYFT]、テイクツー・インタラクティブ・ソフトウェア[TTWO]

8月9日(水)

ロブロックスA [RBLX]、ウェンディーズ [WEN]、ウォルト・ディズニー [DIS] 、ウィン・リゾーツ [WYNN]

8月10日(木)

ラルフローレン[RL]