フィッチ、財政信頼感の低下により米国長期債の格付けを引き下げ

米国の格付け会社フィッチ・レーティングスは8月1日の引け後、米国長期債の格付けを最上位「AAA」から「AA+」へ1段階の引き下げを発表しました。理由としては、財政の悪化、政府債務負担の増大、債務制限の膠着状態が繰り返されることによる財政信頼感の低下が挙げられています。

このサプライズとなったフィッチによる米国長期債の格下げを受け、米国10年債利回りは一時4.122%へと上昇。これは2022年11月以来の高いレベルです。株式市場は金利上昇を嫌い、特に2023年に入って買われてきたグロース株が売られる展開となりました。前回米国政府が債務上限引き上げ合意に達しなかったことを理由に米国債の格下げがあったのは2011年8月5日のことです。この時は格付け機関のS&Pが米国長期債券の格付けを同じく「AAA」から「AA+」へ引き下げを行っています。

今回の格下げを受けてJPモルガン・チェース[JPM]のジェイミー・ダイモンCEOはこのフィッチによる格下げは最終的に問題ではないと語っています。それは借り入れコストを決定するのは格付会社ではなくマーケットであるため、「実際にはそれほど重要ではない」と発言、そもそも米国とその軍隊が生み出す安定に依存をしている他国が米国より高い評価を受けるのは「ばかばかしいこと」だと付け加えています。

今回の格下げ、市場に与える影響は大きなものではないと考える理由

今回の格下げは2回目の経験で、市場が初めて経験し動揺した2011年の格下げとは異なります。現在はインフレに対する金融当局の取り組みも進んでおり、経済が堅調であることを考えると、今回の引き下げが市場に与える影響は大きなものではないだろうと考えられます。8月3日引け後のアップル[AAPL]やアマゾン[AMZN]の決算発表次第では、8月2日のマーケットの下げはone day event(1日だけの出来事)となる可能性もあります。また8月4日の雇用統計が市場予想を下回る発表するとすれば、ここからマーケットが大きく下がるような展開は回避されると考えられます。ただ、歴史的に8月、9月の米国株が上昇する確率は低いことを補足しておきます。