日銀の政策修正に絡む投機的なトレードは終了
巷の相場展望を見ると、「日銀が事実上YCC(イールドカーブ・コントロール)の上限を撤廃したことで市場が落ち着きを示すまでは神経質な展開が続く」などという弱気な見通しが多いが、先週末のストラテジーレポート『NYダウ平均の記録的連騰と日銀の政策変更が意味するもの』で述べた通り、日銀の政策修正に絡む投機的なトレードは終了したと考えられる。「日銀がYCCを修正する」というただ一点に賭けただけの投機(博打)なので、その材料が出尽くした今、もう投機(博打)の材料がないからだ。
そもそも、今回のYCC修正によって日本の長期金利がどれだけ上昇したのだろう。一時0.575%まで上昇し、引けは0.54%だ。これまでの上限が0.50%だったから、それをほんの数bps越えただけだ。それによって金融市場のプライシングが大きく変わるはずがない。
実際に、28日の東京市場がクローズした後の海外市場では既にYCC修正に絡む動きはなかったかのようになっている。ニューヨーク外国為替市場で円相場は5営業日ぶりに大幅に反落し、前日比1円70銭円安・ドル高の1ドル141円15~25銭で取引を終えた。シカゴ日経平均先物も大幅高となった。9月物は前日比590円高の3万3095円で終え、3万3000円の大台を回復している。
金曜日の段階で日経平均のローソク足は長い下ヒゲを引いた陽線で、底入れの兆しが明瞭だ。5日線が25日線を下から上に抜けて調整局面は終了と見られる。週明けの東京市場で日経平均は先週末のNY株の反発、特にナスダックの大幅高を好感して高く始まるだろう。
そのあと上値を追っていけるかは今週の材料次第。特に企業業績が鍵を握る。
国内企業決算発表前半戦に注目
国内企業の決算発表が前半戦のピークを迎える。31日はJT(2914)、第一三共(4568)、三菱電(6503)、パナソニック(6752)、村田製(6981)、三井住友(8316)、みずほ(8411)、商船三井(9104)、8月1日にトヨタ(7203)、三井物産(8031)、三菱 UFJ(8306)、2日にはTDK(6762)、川崎汽船(9107)、3日には花王(4452)、JFE(5411)、任天堂(7974)、三菱商事(8058)、日本郵船(9101)、4日には日本製鉄(5401)、三菱重(7011)、伊藤忠(8001)、三井不(8801)など主要企業の発表が集中する。なかでもトヨタの決算は注目される。先週発表されたトヨタ系自動車部品主要8社の4~6月期決算は最終損益がそろって改善した。デンソー(6902)など4社は通期の純利益予想を上方修正し、うち3社が最高益を見込む。自動車生産の回復や円安などが利益を押し上げている構図が鮮明で、総本山であるトヨタの決算がどうなるか注目したい。
米国企業決算も佳境、経済指標は特段の材料にならないと予想
米国では1日にキャタピラー[CAT]と半導体のアドバンスト・マイクロ・デバイシズ[AMD]、2日にクアルコム[QCOM]、そして3日にアマゾン[AMZN]、アップル[AAPL]の決算発表があり、こちらも佳境を迎える。
経済指標は31日に国内で6月の鉱工業生産、中国で7月の製造業PMIの発表がある。米国では1日にISM製造業景況感指数、3日にISM非製造業景況感指数が発表される。市場の予想では製造業が小幅改善、非製造業が小幅に悪化する見込み。非製造業の小幅悪化とは言え、依然として50を上回っており問題はない。4日発表の雇用統計では非農業部門雇用者数は19万人増(同20.9万人増)へ鈍化する見込みだが、これも特段材料視はされないだろう。
予想レンジは3万2500円~3万3500円とする。