モトリーフール米国本社 – 2023年6月25日 投稿記事より
主なポイント
・未来がどうなるかはバフェット氏にも分からないが、不確実性が同氏の投資プロセスに影響を及ぼすことはない
・伝説の投資家は好況の時も不況の時も、同じ投資原則に則っている
・バフェット氏の戦略は競争優位性に着目し、堅実な企業を割安な価格で買うことである
オマハの賢人による時代を超えた投資アドバイスは、不確実な時期にこそ特によく響く
この数年間は、投資家にとってめまぐるしい時期でした。主要株価指数は2021年に急騰して過去最高値を更新した後、急転直下、過去10年以上で最悪の弱気相場に突入しました。それから1年以上の不遇の時期を経て株価は再び勢いを取り戻し、S&P500指数とナスダック総合指数は(本コラム執筆時点で)年初来それぞれ14%と29%上昇しています。
しかし、次に何が起こるかという点については意見が分かれています。2023年3月、米連邦準備制度理事会(FRB)は年内に緩やかな景気後退に陥る可能性があると警告しました。同じ頃、S&P500指数とナスダック総合指数はどちらも直近の安値から20%以上上昇しており、定義によっては強気相場入りしたと言える状況にありました。こうした一見矛盾する指標を前に、投資家はどうしたらよいのでしょうか。
このような時は、著名投資家であるバークシャー・ハサウェイのウォーレン・バフェットCEOのアドバイスに従っておくのが得策かもしれません。同氏は過去数十年にわたり、卓越した運用成績を上げています。一言で言うと、「オマハの賢人」と呼ばれる同氏は、今こそ投資するべきだと主張しています。
不確定要素が山積み
バフェット氏は、経済が低迷している時には不確実性がつきものであることを認めた上で、状況を明確に示しています。
金融界は混乱しています。しかも、金融界の問題が経済全般に漏れ出し、今では漏れ出すどころか噴出しつつあります。近い将来、失業率は上昇し、企業活動は低迷し、ゾッとするようなニュースが見出しを飾るようになるでしょう。
これは現在の状況を的確に表しているとも言えますが、驚くことに、このコメントは実は、世界金融危機の真っ只中にあった2008年10月に、バフェット氏がニューヨーク・タイムズ紙に寄稿した意見記事の中で発せられたものでした。一方で同氏は、この時期に株式を購入していたことも明らかにしています。注目すべきことに、この記事が掲載されてからわずか数ヶ月後に株価は反発しました。
当時、市場の底打ちが近く、株式市場で過去最長の強気相場が始まろうとしていることを、バフェット氏が知っていたはずはありません。
バフェット氏はさらに、目先何が起こるかは誰にも分からないとしながらも、将来をしっかりと見据えている投資家であれば十分に報われるだろうと断言しました。
株式市場の短期的な動きを予測することはできません。1ヶ月後や1年後に株価が上昇しているか下落しているかなど、皆目見当がつきません。しかし、センチメントや景気が上向くよりかなり前に、株式市場が上昇、しかも大幅に上昇する可能性は極めて高いと言えます。つまり、コマドリが来るのを待っていたら春は終わってしまうということです。
同氏はまた、「ほとんどの大手企業は、今から5年後、10年後、20年後に過去最高益を記録しているでしょう。長期的に見て、株式市場の見通しは良好です」とも述べました。
言い換えると、2023年に景気が後退しようと強気相場になろうと関係ありません。投資家は、株式を購入したら何年も、いや何十年も保有し続ければよいのです。
割安株を買う
バフェット氏によれば、投資家が犯す最大の過ちの1つは、株式を買うのに対価を支払い過ぎることです。同氏はしばしば自身の師であり、バリュー投資の父と呼ばれるベンジャミン・グレアム氏の言葉を引用して、「価格は支払うもの、価値は手に入れるもの」と言います。支払い過ぎを避ける最善の方法の1つは、安い時に株を買うことです。バフェット氏は、「靴下(ソックス)であれ株式(ストックス)であれ、質の高い商品が値下げされた時に買うのが一番だ」と言っています。
その一例が、台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング(以下、TSMC)(TSM)でしょう。TSMCは世界最大級の半導体メーカー(ファウンドリ)であり、人工知能(AI)用チップの好調で恩恵を受ける好位置にいます。
2024年1月期第1四半期(2023年2~4月期)の決算内容が予想を上回ったことを受け、多くの投資家がエヌビディア(NVDA)の株式を買い漁っていますが、それは当然のことです。エヌビディアは、AIシステムで使用されるプロセッサーの主力プロバイダーです。さらに、AI需要の急増に伴い、5~7月期の売上高が前年同期比64%増となる見通しを公表したことも、熱狂に拍車をかけています。ところが、その結果、エヌビディアのバリュエーションは成層圏にまで達し、実績株価収益率(PER)で224倍、株価売上高倍率(PSR)で42倍という水準にあります。
一方で、エヌビディアの先端プロセッサーの製造をすべて請け負っているTSMCのPERはわずか16倍です。S&P500指数の足元のPERは25倍であることを考えると、TSMCは驚くほどお買い得と言えます。
先日、バークシャー・ハサウェイはTSMC株をすべて売却しましたが、これは台湾をめぐる地政学的緊張をバフェット氏が懸念したことが背景にあります。バフェット氏は、「売らなければ良かったとも思うが、これが現実です。(TSMCは)最も経営が優れた企業の1つであり、世界で最も重要な企業でもあります。少なくとも私の見解では、半導体業界でTSMCに並ぶ企業はありません」と述べました。これは業績分析に長けた稀代の投資家からの最高の賞賛と言えます。
競争力のある企業に投資する
バフェット氏が銘柄選択の際に用いるもう1つの基準は、経済的な「堀」の評価、つまり、激しい競争の中でも繁栄し続けることのできる強固な競争優位性があるかどうかです。
難攻不落の堀を持っていると思われるバフェット銘柄の最たる例は、アップル(AAPL)でしょう。バフェット氏はその堀を形成しているものとして、iPhoneの忠実な顧客を挙げています。同氏は、たとえ大きな経済的インセンティブがあったとしても、iPhoneユーザーがアップル製品を手放すことはないだろうと確信しています。
バフェット氏は最近、バロンズ紙のインタビューで、「アップルのユーザーに、今持っているiPhoneを手放し、二度とiPhoneを買わないなら、1万ドルをあげると言っても、その申し出を受け入れることはないだろう」と語りました。
バフェット氏はアップルの配当も気に入っていて、同社は先日、1株当たり配当を4%引き上げで0.24ドルとしました。2012年に配当を再開して以降、アップルの配当額は実に153%引き上げられています。
同氏はまた、アップルの自社株買いについても「大賛成」という見解を示しています。自社株買いが行われれば、追加投資をしなくても、アップルが生み出す利益に対するバークシャー・ハサウェイの持ち分が高まるというのが同氏の意見です。
時は今
結論として、バフェット氏は、未来は不確実であり、短期的に何が起こるか見当もつかないことを認めています。しかし、同氏は経済的な堀に着目し、堅実な企業を割安な価格で買うことを好んでいます。いったん買ってしまえば、あとは時間に任せ、長期的に保有し続けるのです。これは、バフェット氏のスタイルと同氏の結果を真似したい投資家にとって、確実な枠組みとなるかもしれません。
免責事項と開示事項 記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Danny Venaは、アップル、エヌビディアの株式を保有しています。モトリーフール米国本社はアップル、バークシャー・ハサウェイ、エヌビディア、台湾セミコンダクター・マニュファクチャリングの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。