モトリーフール米国本社、2023年1月10日 投稿記事より
主なポイント
・キャシー・ウッド氏が1月9日にアドビ、テスラ、グローバル・イー・オンラインの株式を購入したが、3社とも株価は2022年に大幅に下落
・ウッド氏は、主要保有銘柄の押し目買いに動く傾向がある
・アナリストは、2023年に3社とも増収率が減速するとみているが、どの企業もプラス成長を維持する見通し
グロース株重視のキャシー・ウッド氏が運用する上場投資信託(ETF)は、過去2年間のリターンは散々だったが、2023年に入って既に市場をアウトパフォームしている
アーク・インベストメントのキャシー・ウッドCEOが運用するETFファミリーは、2年連続で散々な成績となりましたが、2023年に入って盛り返しています。中でも最も人気のあるETFは、年初の5営業日に5%上昇しました。大した上昇率ではないように見えるかもしれませんが、市場をアウトパフォームしているという点が、いつもと大きく違います。
1月9日、ウッド氏は保有銘柄の中でも株価下落が特に顕著なアドビ、テスラ、グローバル・イー・オンラインを買い増しました。3社の詳細を見てみましょう。
アドビ
フォトショップは、アドビが販売する画像加工ソフトですが、アドビを良く見せるのにフォトショップは必要ありません。同社は8期連続の2桁増収を達成したばかりで、着実に成長を遂げていることは明らかです。これほどの安定成長を実現できる秘訣は、サブスクリプション売上という確実な収入源にあります。
デスクトップパブリッシング(DTP)の巨人である同社は、画像加工やPDFファイルだけの企業ではありません。オンラインパブリッシングのための一連のツールを揃えた「クリエイティブ・クラウド」や、デジタル署名市場で人気のプラットフォームなど、幅広いデジタルツール製品を提供しています。
成長率は鈍化しており、だからこそ同社は2022年9月に、オンラインデザインツールを手掛けるフィグマを200億ドルで買収すると発表して投資家を驚かせたのでしょう。このニュースに投資家は失望し、発表から3営業日で時価総額は350億ドルも減少しました。その後、株価はやや回復していますが、依然としてフィグマ買収を発表した時の水準には戻っていません。
とはいえ、アドビの勢いは続いています。過去4四半期は、ウォール街の予想を上回る利益を上げ続けています。アナリストは2022年12月に始まった今年度の増収率が9%に鈍化すると予想していますが、2桁の増収率の連続記録が途切れると決めつけるのは尚早かもしれません。同社は多くの指標で過小評価されてきた歴史があり、業績の「上振れと上方修正(beat & raise)」を繰り返しながら、多くの嵐を切り抜けてきた実績があります。
テスラ
電気自動車(EV)のリーダーであるテスラにとって、2022年は大荒れの幕引きとなりました。2022年12月、米国では年内納車を条件にテスラ車のモデル3とモデルYが大幅に値引きされました。値引き幅は3,750ドルから始まり、年末最後の11日間は7,500ドルの値引きに1万マイル分の無料充電まで付きました。
これほどの出血セールも報われず、テスラは先日、予想を下回る2022年第4四半期の納車台数を発表して投資家をまたしても失望させました。決算が発表されたときに、積極的な販促活動が利益率に及ぼすと思われる影響を考えれば、テスラの株価が逆走している理由は簡単です。
2023年に改定予定の税額控除を相殺するために12月に値引きしたという見方もありますが、その後、多くのテスラ車が税額控除の対象外であることが分かりました。では、7,500ドルの値引きがなくなった今、人々はテスラ車を買うでしょうか。
中国市場では、同社はこの3ヶ月で2回目となる大幅値下げを実施し、購入したばかりの顧客から抗議を受けることになり、クールなEVを値引きしたのに抗議されるという面倒な事態に発展しています。ウッド氏はテスラ車よりもテスラ株の方がもっと割安だと判断して株式購入に動いたとみられますが、今後1~2四半期はいくつかの難題が待ち受けていると思われます。
グローバル・イー・オンライン
グローバル・イー・オンラインは、その社名が示す通り、企業がオンラインでより多くの人々に販売できるよう支援しています。あらゆる規模のEコマース小売企業向けに国境を越えたソリューションを提供することで、地域の成功企業に世界への扉を開いているのです。
同社の成長は目覚ましく、2020年に売上高は2倍以上に増加し、2021年も80%という驚異的な増収率を達成しています。成長率は鈍化していますが十分に許容範囲内であり、直近四半期でも前年同期比79%増でした。経済の不確実性は好材料ではありませんが、国境を越えたオンライン販売とフルフィルメント業務を促進するために、グローバル・イー・オンラインと提携したいという企業の意欲は高まると思われます。
赤字は拡大しており、当然ながら足元の投資環境では良い印象ではありません。しかし、2022年に株価が3分の1以下に下落したとはいえ、市場を大きく凌駕する増収率という魅力を見過ごすことはできません。株価売上高倍率(PSR)は、実績ベースでは10倍で割高感はありますが、2023年の予想売上高に基づくと6.3倍と、より妥当な水準と言えます。
免責事項と開示事項 記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Rick Munarrizは、記載されているどの企業のポジションも保有していません。モトリーフール米国本社はアドビ、グローバル・イー・オンライン、テスラの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは以下のオプションを推奨しています。アドビの2024年1月満期の420ドルコールのロング、アドビの2024年1月満期の430ドルコールのショート。モトリーフールは情報開示方針を定めています。