日米ともに株式市場の動揺が収まらない。世間の解説を見ると、FRBによる利上げの加速や量的引き締め(QT)の前倒しが警戒されているというが、そんなことはないだろう。何度も示している通り、利上げそのもので株高が崩れたことはない。重要なのは長期金利で、長期金利と株式益回りの差(イールドスプレッド)が縮小すれば、株価の割高感が意識され、調整が起きたことは過去に何度もある。ところが、いまはまだイールドスプレッドはそれほど縮小していない。今よりも春の金利上昇時のほうがイールドスプレッドは3%を割り込み2.8%まで縮小したが、それでも株は上げ続けた。今は金利と株価のバリュエーションの関係で言えば、まだ余裕がある。

イールドスプレッド(赤)・米国10年債利回り(緑)・S&P500(青)
出所:Bloombergデータよりマネックス証券作成

長期金利の上昇幅にしても、春は前年のボトム0.5%から1.7%まで上がった。直近は1.4%から1.8%まで40bps上がっただけである。

理論株価は業績と金利の関数である。そこからすれば、株価はたいして崩れる必要がない。しかし、あくまで【理論】株価の話であって、現実には理屈以外の要因が影響する。足元の相場の軟調さを一言で言えば、「FRBの金融政策の大転換に市場が敬意を払っている」ということだろう。未曽有のマネーをばらまき、コロナ禍の景気回復を支え、米国株を史上最高値に押し上げた世紀の金融緩和を手仕舞いするのだ。それを無視して株価が上がり続けたら、それこそ異常である。ここは多少なりとも調整してみせるのがFEDに対する「市場の礼儀」だろう。

いずれ収まるので、ここは耐えるところだ。

今の市場の混乱の源は何かといえば、インフレだ。しかし、これも落ち着いてくるだろう。前回のレポートで指摘したように既にその兆候が見られる。

そして、すべてのオフィシャルな経済予測でも、インフレはこの先、落ち着く見通しになっている。

①先般、12月のFOMCでの経済見通しでは、PCEの中央値が2021年5.3% ⇒ 2022年2.6% ⇒2023年2.3%と低下する予想を示した。

②米国で最も古い四半期マクロ経済予測であるフィラデルフィア連銀のThe Survey of Professional ForecastersではヘッドラインCPIは2021 Q4の4.6%をピークに、2022年はQ1からQ4にかけて、3.0%, 2.6%, 2.5%, 2.4% と年間で徐々に沈静化する見通し。

③IMFの世界経済見通しは以下の通り述べている。「我々の予測では、先進国の年間インフレ率は、年末の数か月で平均3.6%のピークに達した後、2022年前半には中央銀行の目標に沿って2%に戻ると考えている。」

④OECDのインフレ予測は以下の通り。2021年Q4がピークだ。

出所:OECD

⑤最後にBloombergのインフレ予測である。

出所:Bloomberg

要は、今が胸突き八丁で一番苦しい時期なのだ。この苦しいところを過ぎれば、楽になるだろう。

昨日は大寒の入り(今年は2月3日まで)。一年で最も寒い時期だ。寒さも、コロナ感染拡大も、そして相場も、ここが堪えどころだろう。