世界最大の米ハンバーガーチェーン、マクドナルド(MCD)はコロナ前を上回る業績に
マクドナルドといえば、世界119の国と地域、約39,680店舗を展開する世界最大のファストフードチェーンであり、日本でも最も有名な世界最大のハンバーガーチェーンです。全世界で2兆円強を売り上げ、営業利益ベースでも8000億円ほどは残る(2020年12月期実績)というブランド力とコストパフォーマンスに強みを持つビジネスモデルを持つ企業です。
コロナ禍においては、世界の各店舗がロックダウンの影響で休業を余儀なくされた当初は、業績は悪化しました。しかし、徐々に業績は回復しています。
具体的には図表1に記載の通り、新型コロナウイルスの感染拡大直後の2020年4-6月期の業績は、売上は前年同期比30.5%減の37億6150万米ドル、純利益は68.1%減の4億8380万ドルと大幅な減益となりました。
しかし、1年経過後の2021年4-6月期の業績を見て見ると、売上が56.5%増の58億8790万米ドル、純利益が約4.6倍の22億1930万米ドルとなっています。新型コロナウイルスの拡大が起こる前の2019年4-6月期は売上が54億980万米ドル、純利益が15億1690万米ドルですから、既にコロナ前を上回る業績となっています。
また、直近の2021年7-9月期の既存店売り上げを見てみると、全世界の既存店売上が10.2%増となったのに対し、米国の既存店売上が14.6%増と大きく伸びており、景気回復の著しい米国が業績に貢献していることが分かります。
新型コロナウイルスに絡む行動規制の緩和で人々の消費が戻ってきていることや、テイクアウトなどのコロナ禍での対策が上手くいっていること、メニューの値上げなどが貢献していると考えられます。
なお、マクドナルドは2021年12月1日を基準日とする四半期配当を7%引きあげて1.38米ドルとし、自社株買いを再開する方針も打ち出しており、業績は回復基調が鮮明です。
1977年に米国のマクドナルド株を100万円相当分買っていると?
マクドナルドの株価と配当データについて調査しました。配当については1977年2月まで遡ることができました。一方、株価は1980年7月31日まで遡ることができます。そして、その頃からの株価と配当の状況を確認しました。
1980年7月末の(株式分割を加味した)株価は1.154米ドルとなります。2021年12月23日(木)の終値ベースでの株価は265.95米ドルとなりますから、配当を除いても約230倍になります。
米国のマクドナルドは、現金配当も増加傾向に
それでは、ここに配当を加味するとどうなるでしょうか?1980年7月末に株式を保有したとして、最初に配当をもらえるのは1980年10月31日を基準日とする配当となります。マクドナルドは現金配当をその後も基本的には毎年出し続けており、配当は増加傾向です。
そして、仮に配当が出た翌月末の株価で配当分だけマクドナルドの株を買い増した場合、2021年12月23日までに持ち株は1.76305株となっています。つまり、株価で約230倍になっている一方、配当分の買い増しによって持ち株も1株から1.76305株まで増えていますので、単純にかけ算をすると405.5倍になっている計算になります。(※)
(※)正確に計算する場合は、単純にかけ算はできないため、あくまで倍率はイメージとなります。また、単位株未満で買う制度があった場合の配当金再投資による参考事例です。なお、税金や取引手数料、為替手数料は考慮しておりません。
もしも、1980年7月に100万円分マクドナルドの株を買った場合、為替レートが同じあれば、現金配当分を買い増ししていなくても、およそ41年後の2021年12月には2億3000万円となります。配当分を買い増していれば、4億550万円まで増えていることになります。
日本のマクドナルドと比較すると
マクドナルドといえば、東京証券取引所にも日本マクドナルドホールディングス(2702)が上場しています。上場したのは2001年7月と1966年7月に上場した米国のマクドナルドと比較すると随分遅れた上場となるのですが、日本マクドナルドホールディングス(2702)が上場した直後に投資を行っていたらどうなっていたのかを比較してみましょう。
日本マクドナルドホールディングス(2702)は米国のマクドナルドのグループに属しており、米国のマクドナルドはカナダとシンガポールの法人を通じて日本マクドナルドホールディングス(2702)の株式を保有しています。もともと米国のマクドナルドが日本マクドナルドホールディングスの約50%の株式を保有していました。しかし、2020年7月に日本マクドナルドホールディングス(2702)の保有比率を49.99%から35%程度まで減らす方針を発表しており、2021年9月現在では株式保有比率は合計約35%となっています。
日本マクドナルドホールディングス(2702)は、2001年7月に上場しました。その知名度の高さからIPOで非常に人気が出て、公募価格は4700円でした。しかし、利益から見た株価水準が高すぎた上、業績が頭打ち傾向であったこともあり、上場後株価は低迷していきます。
その後2014年には期限切れチキンの利用、2015年には異物混入問題などがあり過去最悪の赤字を経験し経営に苦しい時期もありましたが、その後様々な課題等に対して改革を行い、2016年にはV字回復を遂げました。
米国のマクドナルドと異なり、日本マクドナルドホールディングス(2702)は、配当が長年一定で30円でした(日本企業の全体がそのような傾向でした)。また、日本だけで事業展開を行っていることから、全体業績はそこまで大きく伸びていません。対して米国のマクドナルドは、2020年12月期で米国の売上構成比率は約4割です。
日本マクドナルドホールディングスの2002年12月期の業績は売上が3207億円、純利益が23億円の赤字となっており、黒字転換した2004年12月期でも売上は3081億円、純利益は37億円です。時を経て、日本マクドナルドホールディングス(2702)の2020年12月期の業績は売上が2883億円、純利益が202億円となっています。2002年と比較すると純利益こそ伸びていますが、売上はむしろ縮小しているような状態で、米国のマクドナルドと異なり、株式分割も一度も行っていません。
2001年に日本マクドナルドホールディングスを100万円相当分買っていると?
もし仮に、上場の公募価格で100万円分の日本マクドナルドホールディングス(2702)の株を買っていたとしても、2021年12月23日までにおよそ20年かかって、111万円ほどにしかなっておらず、同じマクドナルドでも米国とは大きな運用成績の差が出ていると言えます。
もちろん、日本でも近年は現金配当を増やしたり、自社株買いを行う株主還元強化やROE重視の経営が上場企業の中で行われるようになり、日本マクドナルドホールディングス(2702)も2019年12月期からは配当も増えてきています。
また、日本マクドナルドホールディングスにおいては以下の通り、株主優待があります(図表6)。株主優待制度は日本特有です。
優待獲得株数:100株以上、権利確定月:12月、6月
ただ、長期間、株主還元の文化が根付いている(そして、金融政策・財政政策による経営環境も異なる)米国企業と比べると、日本企業への投資効率は少し劣ってみえてしまうところもあるかもしれません。