S&P500は1.5%上昇、ナスダック100は2.9%上昇

先週(2月10日週)の米国株は、インフレデータの発表、トランプ大統領の関税政策、そして企業決算が大きな焦点となりました。

S&P500は1.5%上昇、史上最高値に迫る展開となり、ナスダック100は2.9%上昇と12月以来の好成績を記録し、全体的に堅調な週となりました。全世界的に株式市場は堅調な動きをとり、米国株のウエイトが66%を占めるMSCIの全世界株指数は1.7%の上げ、一方、日経平均株価は0.93%の上げで1週間を終えています。

S&P500は2025年1月23日に更新した史上最高値(6118.71)にあと4.08ポイントまで戻してきました。

パウエルFRB議長の発言は波乱なし、CPIは食品価格が上昇

パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長は2月11日(火)、上院銀行委員会での年2回の証言を行い、特に波乱のない内容となりました。パウエル議長は、1月のFOMC(米連邦公開市場委員会)会合後の記者会見と同様に、インフレ率がFRBの目標を上回り、労働市場が堅調である限り、利下げを急ぐ必要はないとの考えを改めて強調しました。

先週(2月10日週)は、12日(水)発表の1月消費者物価指数(CPI)や13日(木)発表の生産者物価指数(PPI)といった経済指標に注目が集まりました。市場は予想を上回るインフレの可能性に警戒していました。

実際には、CPIは前年同月比3.0%上昇し、特に食品価格の上昇が目立ちました。なかでも鳥インフルエンザの影響で卵の価格が前年同月比で53%も上昇していることから、消費者の購買力への影響が懸念されました。この結果、FRBの利下げ期待は後退し、金利据え置きの可能性が一層強まりました。しかし、マーケットの反応は、朝方、株式市場は下落したものの、その後マーケットは落ち着きを取り戻し、現在のマーケットの力強さを感じさせます。

関税政策でUSスチール[X]などの株が上昇

関税政策も市場に大きな影響を与えました。トランプ米大統領は鉄鋼・アルミニウム輸入に対する25%の関税を正式決定しました。この関税は、海外企業が低価格の鉄鋼を米国市場で販売することを困難にし、米国内生産者を支援することになります。その結果、米国の鉄鋼メーカーが価格を引き上げる可能性も出てくるでしょう。実際に、先週、USスチール[X]は4.7%上昇、クリーブランド・クリフス[CLF]は17.9%と大きく上昇しました。

一方、自動車メーカーは生産コストの上昇に直面する可能性があります。ゼネラルモーターズ[GM]の株価は当日1.7%下落しましたが、週ベースでは持ち直し、2%上昇して終えています。業界のアナリストの見方によると、この関税により、新車の平均価格49,000ドルが約4%(ほぼ2,000ドル)のコスト増につながる可能性があるとのことです。

さらに注目を集めたのは、トランプ米大統領が示唆した「相互関税(Reciprocal Tariffs)」の導入でした。最終的には国別に精査する方針が発表され、即時の関税発動が避けられたことからマーケットは安心感を示し、先週米国株は上昇しました。しかし、今後の調査結果や各国との交渉次第では、貿易関係に影響を及ぼす可能性があるため、引き続き注視が必要です。

アップル[AAPL]とアリババ[BABA]のAI提携、中国市場回復の鍵となるか

アップル[AAPL]が中国のアリババ・グループ[BABA]と提携し、同社の人口知能(AI)機能を中国市場で販売するiPhoneに導入すると発表。先週アップルは7%上げ、アリババ・グループは20%上昇と株価は好感し、マーケットのサポートとなりました。

中国市場でiPhoneのマーケットシェアが下がっていた理由として、AI機能が搭載されていないことが理由に挙げられています。その課題を克服し、市場での地位を回復できるかが今後の焦点となるでしょう。中国市場で、現地化されたApple Intelligenceの導入が実現すれば、2026年度の売上成長に大きな影響を与える可能性があります。また、アップルのクックCEOはX(旧ツイッター)で、2月19日に新製品の発表を行うと投稿しています。

小売売上高の低迷とウォルマート決算への期待

先週木曜日に発表された小売売上高の低迷も注目されました。1月の小売売上高は前月比0.9%減少し、市場予想を大幅に下回る結果となりました。ロサンゼルスの山火事や南部の冬季気候の影響が要因と考えられていますが、インフレ圧力を和らげる可能性もあるため、投資家の反応は限定的でした。

今週2月20日(木)には小売大手ウォルマート[WMT]の決算発表が予定されており、小売業界全体の今後の見通しを占う重要なイベントとなります。ウォルマート株は過去12ヶ月で85%上昇しており、決算への期待が高まっています。

トランプ米大統領は、「それほど遠くない未来」にロシアのプーチン大統領とロシアとウクライナの停戦交渉をするため会談を行う予定であると発表しています。和平交渉に向け事態が進展するのであれば、米国株式市場は平和の配当を受けることになると考えられます。

なお、2月17日(月)は「プレジデント・デー」で、ニューヨーク株式市場は休場となります。