米ドル/円で遅れる「行き過ぎた円安」是正

ユーロ/円の5年MAかい離率は、最近にかけて一時10%を割れてきた(図表1参照)。同かい離率が10%を下回るのは2023年1月以来約2年ぶりになる。その意味では、ユーロ/円の「上がり過ぎ」やユーロに対する「行き過ぎた円安」の是正は着実に進んできたと言えそうだ。

【図表1】ユーロ/円の5年MAかい離率(2000年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

また、ユーロ/円と同様に代表的なクロス円の豪ドル/円は、5年MAかい離率がユーロ/円のそれよりさらに早いペースで縮小、一時は6%程度まで縮小した(図表2参照)。これは、2022年2月以来、約3年ぶりの水準になる。

【図表2】豪ドル/円の5年MAかい離率(1990年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

主要なクロス円の中で、5年MAかい離率がなお2ケタなのは英ポンド/円(2月12日現在、14%)くらいである。同かい離率が45%と異常な水準まで拡大していたメキコシペソ/円も、足下では一時10%を割れる動きとなっている(図表3参照)。以上のことから、クロス円全般で、「行き過ぎた円安」の是正が急ピッチで広がってきたと言えるだろう。

【図表3】メキシコペソ/円の5年MAかい離率(2006年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

これに対して、米ドル/円の5年MAかい離率は、足下でも17%程度となお高い水準で推移している(図表4参照)。その意味では、米ドル/円の「上がり過ぎ」、米ドルに対する「行き過ぎた円安」の是正の遅れが目立っている。

【図表4】米ドル/円の5年MAかい離率(1990年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

「行き過ぎた円安」の構図がいよいよ大きく変わる可能性

見方を変えれば、米ドル/円の印象以上に、クロス円などでは着実に「行き過ぎた円安」の是正が進み始めたと言える。2024年7月に1米ドル=161円まで米ドル高・円安が進んだ局面のように、米ドルだけでなく多くの通貨に対して「行き過ぎた円安」が広がっていた状況は変わり始めたようだ。

米ドル/円で「行き過ぎた円安」の是正が遅いのは、トランプ政権の誕生により、米金利上昇見通しがなお根強い影響が大きいだろう。そうした米ドル高・円安も変わるようなら、ここ数年続いてきた「行き過ぎた円安」の構図はいよいよ大きく変わる可能性が高いのではないか。