これだけは知っておきたい株式投資の税金

早いもので、2023年ももうすぐ終わりです。皆さんの株式投資の成果はいかがでしたでしょうか。

2023年は、世界的なインフレ進行懸念がひと段落し、FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げ打ち止め、そして利下げ観測も高まる中で年末を迎えました。日経平均株価は、急速な円安も相まって特に4月から6月にかけて大きく上昇、11月20日には33,853円46銭まで上昇してバブル後の高値をつけました。年初からみると、2023年12月15日時点での日経平均株価の上昇率は約26%と、大幅上昇となりました。米ドル/円は円安が進み11月に一時151円台をつけましたが、その後は米国の利下げ観測が強まり、2023年12月15日時点では142円前後まで押し戻されています。

このような状況下ですが、ここでは年内にぜひ確認しておきたい株式投資の税金に関する取り扱いについて解説します。

原則:実現した売却損益がプラスであれば、それに対して20.315%が課税

まず、株式投資の税金は「実現した利益」に対してかかります。ですから、買った株が大きく値上がりして多額の含み益があったとしても、それを実際に売却しない限り、税金は発生しません。

日経平均株価は大きく上昇し、個別銘柄の中にも上場来高値を更新するなど、大きく上昇したような銘柄もあります。それらの銘柄を売らずに保有していれば含み益も膨らんでいると思いますが、売却しなければ税金の心配は不要です。

そして2023年中に実際に売却した株式の利益と損失をネットして、差し引きプラスであればその金額に対して20.315%の税金が課税されます。

源泉徴収ありの特定口座を使っているのであれば、この課税は源泉徴収という形で証券会社側で対応されます。

売却損と配当金は相殺できる

2023年の日経平均株価は確かに大きなプラスでしたが、個別銘柄に目を向けると、小型成長株など軟調な動きが続いたものもかなり多く、個別株投資をしている個人投資家の中には運用成績がマイナスだった、という方も数多くいらっしゃると思います。

もし売却益と売却損をネットして差し引きマイナスだった場合、2023年中に受け取った配当金と相殺することができます。

例えば2023年の売却損が10万円、受け取った配当金(税金が引かれる前の金額)が20万円だとすると、20万円-10万円=10万円が課税対象となります。配当金は受け取る際に20.315%が源泉徴収されていますので、相殺により10万円に対する税金が戻ってくることになります。

この売却損と配当金との相殺は、ご自身で確定申告をする必要があります。この時のポイントは、配当金の課税方法を「総合課税」でなく「申告分離課税」とすることです。

他の所得の金額によっては、あえて配当金の課税を総合課税にした方が有利なケースなど、細かい話もあるのですが、ここでは割愛いたします。

なお、源泉徴収ありの特定口座かつ、配当金の受け取り方法として株式数比例配分方式(配当金受取サービス)を選択している場合は、売却損と配当金の相殺を証券会社の方で行ってくれますので大変便利です。

残った売却損は確定申告すれば3年間繰り越せる

売却損と配当金をネットしてもまだ売却損が残る場合は、この損失を翌年以降3年間繰り越すことができ、翌年以降の売却益や配当金と相殺することができます。

ただし、売却損の繰り越しの手続きは、ご自身で確定申告をして行うことが必要ですので十分に注意してください。

よくある勘違いとして、「私は源泉徴収ありの特定口座を使っているから、税金の計算だけでなく納税含めてすべて証券会社が代行してくれている」というものがあります。

確かに税金の計算や源泉徴収による納税は証券会社にて行ってもらえます。しかし、売却損を翌年以降に繰り越す手続きは、例え源泉徴収ありの特定口座を使っていたとしても、ご自身で行わなければなりません。

これを忘れると、翌年以降の利益と相殺し、その分税金が安くなるという恩恵を受けることができませんので注意してください。

なお、会社員の方でふるさと納税を「ワンストップ特例」で行っている方は、もし損失を翌年以降に繰り越すために確定申告を行うと、ワンストップ特例が無効になり、ふるさと納税についてもご自身で確定申告をすることが必要になります。株式投資の税金とは関係ありませんが、影響がある方が多いと思いますのでここでお伝えしておきます。

含み損のある株の損出しにより節税ができる

株式投資の税金については、確定申告自体は2024年の3月15日までに行う必要があります。一方で、2023年中にやっておきたいことがあります。
 
もし現時点で2023年中に実現した利益があり、かつ含み損を抱えている保有株がある場合、それを売却することで節税することが可能です。

例えば2023年中の実現利益が100万円とすると、税額はこの20.315%なので203,150円となります。このとき、30万円の含み損がある株を2023年中に売却すると、100万円だった売却益が30万円減少して70万円になります。この時の税額は70万円×20.315%=142,205円ですので、203,150円との差額である60,945円が節税効果となります。

含み損を抱えている持ち株があり、「ここからの上昇もあまり見込めないなあ」とか「もっと魅力のある株に乗り換えたいなあ」と感じているのであれば、節税効果の見込めるタイミングで思いきって売却して損出しをしてしまうのも一案です。

ただし、損出しするときは、過去から繰り越してきた損失が切り捨てにならないようするための配慮も必要となります。

売却損の繰り越しは3年間が限度です。そのため、2020年に生じた売却損は、2023年の取引分までに利益と相殺しないと切り捨てられてしまいます。

例えば、現時点での2023年の売却損益がプラス100万円、2020年からの繰り越し損失が80万円とします。この状態で、50万円の含み損がある株を売却して損出しすると、2023年の売却損益がプラス50万円となり、2020年からの繰り越し損失と相殺しても30万円が相殺できずに残ってしまいます。

したがって、昨年の確定申告書をチェックして、2020年から繰り越された損失の額がどのくらいあるのか、今から含み損のある株を損出しすることで、2020年からの繰り越し損失から相殺できなくなる恐れがないかどうかを確認してから、実際に損出しを実行するようにしましょう。

現時点で含み益を有している保有株があり、かつ2020年からの繰り越し損失が残っているという場合は、保有株を売却して益出しすることで、2020年の繰り越し損失と相殺すれば、節税することができます。

ただ、この時も相殺の順番には気を付けてください。まず、2023年中の売却益と売却損を相殺し、その結果売却益が残ったときに初めて、前年以前から繰り越してきた損失と相殺ができます。

例えば現時点で2023年の売却損が100万円、2020年から繰り越した損失が50万円である場合、30万円の含み益がある保有株を売却しても、2023年の売却損と相殺されるだけで、2020年からの繰り越し損失と相殺することはできません。このような時は、無理に保有株を売却しなくてもよいでしょう。

現時点で2023年の売却損益がゼロで、2020年からの繰り越し損失が50万円ある場合は、30万円の含み益がある保有株を売却し、繰り越し損失と相殺することで、30万円の20.315%の税金を節税することができます。

なお、過去の繰り越し損失と2023年の利益を相殺するためには、確定申告が必要となりますのでその点ご注意ください。