個人投資家を含め一般的に知られるようになったのは、2009年のリーマン・ショックによる金融不安が生じた際に、米国において金融機関の資産の健全性を調べるために実施(大手19社が対象)した検査を「ストレステスト」と呼んだことにあります。
今、市場関係者にとって「ストレステスト」といえば、金融機関の資産査定のことと考える人が大半なのではないでしょうか。
この「ストレステスト」は景気や市場環境が予想外に悪化した場合を想定し、様々な負荷(ストレス)がかかった際の損失発生状況を算出、資本不足額を試算するものです。それにより金融機関の資産内容の透明性を高め、金融システムの健全化を促し、金融不安を払しょくすることが目的です。
先週金曜日に発表された欧州の民間銀行(ユーロ域内20カ国91銀行)に対して行われたストレステストの結果は、「不合格」はスペインの5行、ギリシャの1行、ドイツの1行(すでに国有化)、の計7行ということでした。
事前予想(「不合格」は10~20行)に比べれば、ずっと少ない=欧州金融システムは健全と捉えられる(そうした声明も発表されました)として、NY株価は発表後大幅上昇しています。ユーロ(ユーロ円、ユーロドル)そのものは混乱した動きを見せた後に買い戻しが入り、上昇して引けました。
一応市場は好感したように見えますが、楽観的に「良い」と判断するのは難しいところでしょう。
発表前から米国で実施したものに比べ、内容が不透明である、基準が曖昧である、といった声がありましたし、発表を受けて、「審査が甘い」という批判が多く出ています。
ソブリンリスクについては、対象にしている国債は短期間で売買するトレード目的のものに限定し、満期保有目的の債券については無事に償還できることを前提にしていますし、不動産価格の下落による影響についても十分反映していないと言われているからです。
結果そのものに対して市場が懐疑的であればあるほど、「市場の安定」からは遠のいてしまいますよね。
欧州の信用状況については、市場関係者と話をしても意見は二つに分かれています。
1.ECBをはじめとする受け皿はできているので、デフォルトはない=金融恐慌のような不安状況には陥りにくい ⇒ 安定へ
2.救済とはいえ当該国にとっては借金を作るだけで、根本的には解決できない=最終的にはデフォルトと同様の状況に落ち込む ⇒ 再度混乱へ
最近では欧州の信用不安は市場の中心テーマからは少し後退してきていますが、引き続き不安定要素があることは変わりないという認識をもって見ていく必要はありますね。
廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー
CFP(R)、(社)日本証券アナリスト協会検定会員