投資で損をした場合、確定申告(損益通算や損失の繰越控除をすること)で、税金をなくしたり減らしたりできます。

損益通算…複数の金融機関の利益と損失を合算

損益通算は、複数の金融機関にある課税口座の利益と損失を合算した金額で税金の計算を行うことです。

特定口座(源泉徴収あり)で利益が出ると、利益にかかる税金を金融機関が計算し、自動的に源泉徴収してくれるため、確定申告・納税する手間が省けます。また、利益が出たあとに、同一年内に損失が生じた場合は、金融機関の口座内で損益通算が行われ、徴収されていた税金が戻ってきます。

しかし、複数の金融機関にある特定口座(源泉徴収あり)で同じ年に売買をして、それぞれ利益と損失が出た場合、金融機関が連携して損益通算を自動的に行うことはないため、本来支払う必要のない税金を支払う必要が生じることになります。

このようなときに、確定申告で損益通算すれば、すでに払っている税金を取り戻すことができます。

例えば、課税口座Aで100万円の損失、課税口座Bで60万円の利益があったとします。損益通算しなくても、課税口座Aでは税金はありませんが、課税口座Bでは利益の60万円に対して20.315%、12万1890円の税金が引かれるため、手取りは47万8110円です。
しかし、損益通算すると、課税口座Aの損失と課税口座Bの利益が相殺できるため、この年の利益は0円、税金も0円になります。

【図表1】損益通算のイメージ
出所:(株)Money&You作成

損失の繰越控除…最大3年間、損失を繰り越し

損失の繰越控除は、損益通算で利益と相殺できなかった損失がある場合に、翌年以降3年間にわたって損失を繰り越し、期間内に生じた利益と相殺できる仕組みです。

【図表2】繰越控除のイメージ
出所:(株)Money&You作成

上記図表の例のようにある年に、課税口座において損失が100万円あったとします。この損失は、最大3年間繰り越して、翌年以降に発生する課税口座の利益と相殺することができます。

たとえば、1年後に20万円、2年後に30万円、3年後に50万円の利益が出たという場合でも、損失と利益を相殺することで、利益がゼロとなり、利益に対して納める税金を減らすことができます。

損益通算・損失の繰越控除をする際には確定申告が必要です。確定申告は毎年2月16日から3月15日の期間内に行います。通常の確定申告書に加えて「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」に必要事項を記入し、提出します。

ただし、合計所得金額は、上場株式等の譲渡損失などの繰越控除の適用を受ける前の所得金額で計上されます。そのため、確定申告を行ったことにより扶養控除、配偶者控除に影響がでる場合もあるので注意が必要です。詳細につきましては最寄りの税務署等へご確認ください。

(注)損失の繰越控除は、取引が発生していない年があっても、3年間毎年確定申告をする必要があります。

NISAでは損益通算・損失の繰越控除はできないが、生涯非課税枠内で税金がかからず手取りを最大化可能

損益通算・損失の繰越控除ができるのは、特定口座・一般口座のみ。NISA口座では利益も損失も「なかったもの」と見なすため、損益通算や損失の繰越控除ができなくなっています。

損益通算・損失の繰越控除ができないことは、NISA口座の注意点です。しかし、生涯の非課税枠内であれば利益に対する税金がかからず手取りを最大化することができるという観点は、NISA制度上のメリットでしょう。注意点を理解した上で、これから投資でお金を増やしたいと考えるならば、まずはNISA口座を最優先でうまく活用したほうがよいでしょう。