中国株は調整局面が続いています。3月14日に温家宝首相が中国の不動産価格は依然として高く、不動産購入に関する規制策を緩和しないとコメントしたことから、特に中国本土市場の不動産株が大きく下落し、相場の足を引っ張りました。その他、中国の2月の貿易赤字が10年振りの最大額となったニュースも相場に影を落としています。中国税関総署が3月10日に発表した貿易データによると、2月の中国の輸出は18.4%増の1144.7億米ドル、輸入は39.6%増で1459.6億米ドルとなり、2月の貿易赤字は314.9億米ドルで、単月ベースでは10年ぶりの最大額となったことを明らかにしました。ちなみに、貿易赤字拡大で、人民元切り上げの圧力が緩和され、3月12日、人民元対米ドルレート基準値は1年間ぶりの1日の最大下がり幅を更新しました。

しかし相場の大きな流れが変わったわけではありません。まず、不動産購入に関する規制策が緩和されなかった点は、何度か指摘してきた両会絡みで不動産セクターに向けて中央政府から支援的なコメントが出るとの期待感が崩されただけです。ある程度は予想されていた点もありますし、相場全体への影響は限定的でしょう。また、貿易赤字についても、このまま中国が貿易赤字国に転落するという見方は当然ながら少なく、単純に旧正月に絡んだ季節的な要因が大きいとの見方が多くなっています。

更に、逆に言えば、金融緩和への期待が更に高まってきたとも言えると思います。貿易赤字以外にも、3月9日に発表された工業付加価値額、不動産開発・販売、固定資産投資、小売額などの成長率もスローダウンしています。このため、中国は景気を維持するために適切に金融政策の緩和を実施する必要が高まってきていると思います。また、2月の貿易赤字は一時的なものだとしても、傾向として貿易黒字は縮小方向にあるので、今後は内需拡大による景気刺激策が打ち出される可能性もより高まってきています。

中国人民銀行が発表した2月の新規貸付額は1月と比べ更に減少しており、タイトな貨幣供給はまだ変わっていません。その一方で、1月のPPIは0.7%増、2月のCPIは3.2%の水準に落ち着き、2年間続いていたマイナス金利は終わりました。これは金融緩和の余地が高まっていることを意味しています。実際のところ、3月12日、中国人民銀行の周小川行長が、現在の預金準備率は20.5%であり、90年代末の6%の水準と比べても高く、他国の預金準備率はそれよりも更に低い水準にあり、現在中国は預金準備率を大幅に引き下げる余地があるとの発言をしています。わざわざこのように発言するということは、近く預金準備率の引き下げがあることを示唆しているのだと思います。従って、現在続いている株価の調整は中期的な上昇の中での、短期的で健全な調整であり、押し目買いを狙う良いチャンスなのではないかと思います。

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